店と客の立場は本来同等。店側のサービスに甘えて横柄な態度を取っている迷惑な客は、いつか痛い目を見るかもしれない。そんなクレーマーを撃退したナイスプレーを紹介する。アパレルメーカーであったケースについて、専門家にアドバイスしてもらった。
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アパレルメーカーに勤務し、接客とお針子を担当しています。直営のブティックには、常連のお客さまがいます。このご時世、ありがたいことなのですが、困るのは彼女のこだわり。どう見ても13号のLLサイズなのに、Mサイズの服しか選ばず、無料での“お直し”を要求されるのです。
小さいサイズを大きいサイズに直すのは、布を足す必要もあり、本当に大変。ほぼ作り直しになります。そもそもせっかくのデザインが変わってしまいますし、本来はきれいに見えるシルエットもくずれてしまうので、うちのブランドである必要がないのでは?と、従業員一同、モヤモヤした気持ちを抱えていました。
そんなとき、かねてから事情を聞いてくれていた店長が彼女の接客をしてくれることに。お客さまはいつものように、店頭に飾ってあった新作のカットソーを見て、
「これいいわね、Mサイズちょうだい」
と注文。すると店長は、
「はい、すぐお持ちしますね」
と、MサイズとLLサイズを持っていきました。
「こちらのデザインは、あえてオーバーサイズを選んでゆったり着ていただいた方が、鎖骨が見えて女性らしく華奢な感じになるんです。ぜひ両方をお試しください」
と、まず差し出したのはLLサイズ。サイズ表記を見た彼女はムッとしたようでしたが、試着してみることに。すると、太い二の腕とウエストまわりが隠れて、誰が見ても細く見えました。その後で、Mサイズも着たところ、まるで別の服のようにパツパツで、みっともない……。
「わぁ、よくお似合いです。大きめサイズもアリですね」
と店長もフォロー。納得してLLサイズを購入してくださいました。それ以降、Mサイズにこだわることはなくなり、お買い上げ後の不毛なお直し作業も減りました。
専門家の解説 「客の間違いやカン違いは」 真っ向から指摘しない」
日本クレーム対応協会代表理事の谷厚志さんが、解説する。
「こういった場合、お客さまの間違いを指摘するとこじれます。間違いやカン違いをしているお客さまの主張を聞き、「参考にさせていただきます」と答えつつ、さりげなく別の提案をするのがおすすめです」
【プロフィール】谷厚志/日本クレーム対応協会代表理事。怒りを笑いに変えるクレーム・コンサルタントとして活動中。
取材・文/村瀬真紀
※女性セブン2020年10月29日号