黒や赤のランドセルを背負った新1年生が入学式へ向かう光景は、もはや昔の話。今日のランドセルは、実にカラフルだ。
そもそも通学かばんとしてランドセルが誕生したのは1887年。伊藤博文が大正天皇の学習院入学のお祝いに献上した通学かばんが始まりといわれている。
一般家庭には、戦後の復興期を乗り越え、徐々に国民が豊かになり始めた1960年代頃から普及。1964年の東京五輪で採用されたトイレのピクトグラムに象徴されるように、古来の男性が黒、女性が赤というカラー意識がランドセルにも定着したといわれる。
長らく赤と黒のみだった色が変化したのは平成に入ってから。2001年に大手総合スーパーのイオンが24色展開を始めたのがきっかけとされる。この頃から、徐々に赤や黒以外のランドセルで登校する子どもが増え始めた。日本色彩研究所・シニアリサーチャーの名取和幸氏が語る。
「2009年、2011年、2014年に全国で調査を行なったところ、水色や薄紫といった色が女子小学生に人気ということがわかりました。こうした色の好みが、ランドセルにも反映していると思います」
アニメーションの影響も大きい。主人公が女性であるばかりか、多彩な色をまとったヒロインたちが悪を倒していくという作品が増えたのも平成からだった。
一方、男子小学生はどうか。名取氏の調査によれば、彼らが選んだのは金色。特に、小学2年生の男子は6割以上が「金色が好き」と答えている。さすがに金のランドセルを欲しがることはなさそうだが、これまでにない傾向に、名取氏も驚きを隠せなかったという。ちなみに、金色に次ぐのが、銀と青だった。
色の好みが多様性を生んだ平成のランドセル事情。令和にはどのようなランドセルが生まれるだろうか。
※週刊ポスト2020年10月30日号