混乱するアメリカ大統領選挙。トランプ大統領が新型コロナウイルスに感染したことで、選挙戦も厳しくなったかに見えるが、熱狂的なトランプ信者たちはそんなことは一切信じない。ジャーナリスト・横田増生氏が拾い上げた彼らの肉声を聞けば、米国の絶望的な“分断”が浮かび上がってくる。
「意図的にうつされたのよ」
共和党の新型コロナに関する姿勢を私が直接体験したのは、9月22日のこと。共和党全国委員会のロナ・マクダニエル委員長が、ミシガン州都のランシングにやってくるというので、州の共和党本部に見に行った。
トランプの支援者30人ほどが参加していたが、マスクをしている人はほとんどなく、ソーシャルディスタンスにも気を払っている様子もなかった。
しかし、地元のテレビ局が取材に来る直前、現場の担当者が支援者に向かって「テレビに映るときは、必ずマスクを着用してください」と言い渡した。ただし、マクダニエルは、マスクをすることなくテレビのインタビューに答え、支援者に向かって話しかけた。
そのマクダニエルが9月25日、ワシントンDCで開かれたトランプも参加した資金集めのイベントに参加。その後、新型コロナに感染したことがトランプの感染よりも前に発覚した。『ニューヨークタイムズ』紙は、トランプの感染経路の可能性の1つとしてマクダニエルの名前を挙げている。
ここで大切になるのは、共和党の支持者たちのトランプ観である。特にトランプが重要視する、郊外に住む白人たちがトランプをどう見ているのか、という点だ。ミシガン州の郊外の住人の声を集めた。
ゲイリー・メイヤー(80)は、新型コロナに罹ってもトランプ支持は揺らがない、と言う。
「すぐに快復して、また選挙活動を再開し、バイデンを倒してもらわないといけない。バイデンになれば、税金が上がるし、電気料金も値上げになるからな」と言う。
ダナ・キャメロン(70)は、新型コロナの陰謀説を唱える。
「大統領がコロナに罹ったのは、きっと陰謀なのよ。意図的にコロナをうつされたのよ。大統領がコロナに罹れば、一番得をするのは誰かを考えてみれば分かるわよね」