「日本一、絡みづらい芸人がこの人ですよ!」──さる10月9日金曜の夜、お笑いライブ『タイタンライブ』および『爆笑問題withタイタンシネマライブ』10月公演(東京・時事通信ホール)のエンディングトークで、爆笑問題の太田光が笑いながらゲストを紹介した。それは山田雅人。上方笑芸界のご意見番、上岡龍太郎をして「こんなアホな芸人はおらん、最高ですわ」と言わしめた男である。
山田は2009年から、長嶋茂雄と稲尾和久の名勝負、永六輔や藤山寛美などの人物伝をひとり語りするライブを演じ続けている。来る10月23日に上演する彼の最新作が「太田光物語」だ。その公演には太田本人も参加するとあって、爆笑問題のライブのゲストに招かれたのだ。
その夜のライブは新型コロナに感染、療養していた田中裕二の復帰漫才披露の場でもあった。いつもはどんなゲストに対しても無理くり仕掛けてくるアグレッシヴな太田光が山田に呑まれてしまう。
山田「今夜は太田さんと会えて、身も心も震えっぱなしなんです。僕にとって、僕の芸にとって、太田さんはお父さんです。光父さん!」
トーク冒頭から山田の話芸に馴染みのない観客のみならず、太田も顔をしわくちゃにしたまま絶句状態が続く。太田は山田にゾッコンなのだ。太田の機能不全を傍らに見て、急きょネタをキャッチして山田に投げ返したのは復帰したばかりの田中だった。山田が得意なひとり語りのネタはスポーツ。そのことに田中が触れるや、「絡みづらい芸」が炸裂する。
田中「山田さんは僕も好きな競馬も語りの芸になさってるんですよね?」
山田「名馬テンポイント、悲運の貴公子テンポイント。時は昭和53年、1月22日。場所は雪積もる京都競馬場、第25回日本経済新春杯。前年の第22回有馬記念にて2大ライバル、トウショウボーイ、グリーングラスをしりぞけ……」
田中「はい、ストップ、ストップ! いいですか。じゃあ、話を戻しますよ!」
この夜、田中がいなければ、独自の話芸を繰り出す山田が太田をテクニカルノックアウトしていただろう。日本お笑い界の雄、太田光が笑いっぱなしになる山田雅人の芸とは? 山田本人に直撃した。
──山田さんを紹介する際、爆笑問題のお二人が「日本一絡みづらい芸人」と言ってましたが?
山田「ホントね、爆笑問題の太田さん、田中さん、面白いですよね。あの二人の脳に住みたいくらいなんです。どういう風に世界が見えてるんでしょう? 住みたいなあ!」
──えーっと、絡みづらい芸人と呼ばれることに関して山田さんご本人としてはどう……。
山田「あー、僕ね、普通にこうなんです。爆笑問題さんがとても面白い、面白いなら褒めるのが当たり前で。年下でも、僕が尊敬できる人なら、その気持ちを表すという。で、お客さんは笑うんですけど、僕としてはいたって通常運転なんです。絡みづらいというのは僕が自分の話に没頭するからじゃないかな」