現地時間10月22日に、アメリカ大統領選挙の最後のテレビ討論会が行われた。前回のような発言妨害や暴言は見られなかったが、論争としては低調でつまらないものだったという評価が多い。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏も、討論そのものは空疎だったと分析した。
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大統領選挙で、投票直前にテレビ討論会を行うことには大きな意義があると思う。アメリカの大統領選挙は、ほとんどの場合、2人から1人を選ぶ投票になるが、今回のようにどちらも不人気な候補の場合、有権者の多くはどちらに投票するか決められず、結局、棄権してしまうケースも少なくない。だからこそ、討論会でそれぞれの考えを有権者に見せることで、投票しようという意欲を引き出すことができるのは良いことだ。
まして、トランプ大統領という人は、一度や二度、テレビで政策を聞いたくらいでは投票に値するかどうか決めることは難しい。政策も性格も一点にとどまることがなく、大統領としての良し悪しを判断するには、何度でも根気よく彼の話を聞く必要がある。その機会が与えられたという意味では、今回の討論会も歓迎すべきものだったと思う。
トランプ氏は、今回の討論会で遅れを挽回できたのだろうか。答えはNOである。トランプ氏が繰り返し持ち出してこだわったのは、バイデン氏の息子であるハンター・バイデン氏がロシアやウクライナから不当なカネを受け取っていたという疑惑だった。スキャンダルで相手を圧倒し、一気に攻守逆転を狙う戦術だったが、有権者は動かなかった。討論会後の世論調査でも、バイデン氏が勝利したと見る有権者のほうがかなり多かったことからもそれはわかる。