新型コロナウイルスの影響による業績悪化で巨額の資金調達を検討する企業が増えている。時短営業などで売り上げ低迷が続く飲食業のワタミは、横浜銀行から30億円を9月末に調達。
鉄道やホテル事業の低迷により、2021年3月期決算で過去最大の630億円の赤字を見込んでいる西武ホールディングスは、傘下の西武鉄道とプリンスホテルが総額800億円規模の第三者割当増資(*注)を検討していると報じられた。主要取引銀行であるみずほ銀行と日本政策投資銀行に引き受けを要請している。
【*注/株主であるか否かを問わず、特定の第三者に株式を引き受けてもらうことで、資金を調達する方法。会社の株主資本を充実させ、財務内容を健全化させるメリットがある】
そんな中、特に大きな話題となったのが、ANAホールディングス(以下、ANA)の巨額借り入れだ。日本政策投資銀行など5行から、約4000億円の追加融資を受けることが固まった。
同社は6月までに金融機関からの借り入れや融資枠の設定によって1兆円超の資金を確保していたが、さらに借金を上乗せすることになった。ANAはいよいよ赤信号なのか。金融ジャーナリストの小泉深氏が語る。
「ANAが受けることになるのは、『劣後ローン』という融資で、通常の融資より返済が後回しになり、負債ではなく一部が資本とみなされる借り入れです。
資本が増強されれば、格付けが下がらず株価も落ちることはありません。日本政策投資銀行もかかわっているので“政府が認めた”という信用もある。今後の資金調達が有利になるメリットもあります。
コロナ前のANAの業績は決して悪くはなく、同社は2023年度には収益力がある国際線がコロナ前の水準に回復すると予測している。それまで持ちこたえるための融資で、額が大きいからといって、一概に“危ない”とは言い切れません」
※週刊ポスト2020年11月6・13日号