2020年ドラフト会議の話題をさらったのは、MAX155キロのサウスポー、早稲田大学のエース・早川隆久である。何球団の競合となるかが注目の的だったが、1位指名を公言していたヤクルト、ロッテに加え、西武、楽天の4球団が競合。抽選の末、楽天が交渉権を獲得した。
早川は千葉の木更津総合高校で2年春に選抜甲子園に出場、3年時には春夏ともに甲子園ベスト8に進出。当時から世代トップクラスの左腕としてプロの評価は高かった。この年の高校日本代表には早川を含む8人の投手が選ばれたが、早川以外の7人はすべてプロ志望届を提出し、4人がドラフト1位で指名された。その7人のプロでの通算成績(2017~2020年)は以下の通りだ。
寺島成輝(履正社→ヤクルト1位) 通算1勝1敗 4HP
堀瑞輝 (広島新庄→日本ハム1位) 通算8勝9敗 13HP 15S
藤平尚真(横浜→楽天1位) 通算7勝12敗
今井達也(作新学院→西武1位) 通算15勝18敗 1HP
高橋昂也(花咲徳栄→広島2位) 通算1勝2敗
藤嶋健人(東邦→中日5位) 通算4勝3敗 18HP
島孝明 (東海大市原望洋→ロッテ3位 一軍登板なし ※昨シーズン限りで引退)
なぜ1人だけ大学に進んだのか。早川は4年前をこう振り返る。
「プロ志望届を出さなかった決め手は、大学選抜との壮行試合に先発し、2回で5失点したことですね。他のみんなは何か武器があったのでプロに行けたけど、自分にはひとつも武器がなかった。だから大学に進んでレベルアップしなきゃいけないと感じました。
当時のドラフトを見ていて、(代表で一緒だった)7人みんなに頑張ってほしいと思いました。でも、この4年間で引退した選手もいる。やはりプロの世界は非常に厳しい。それは理解していたつもりです。だから4年間大学に通って自分なりの解決策、修正方法を身につけられればと」
力強い光を宿すその目には、世代ナンバーワンの自負が詰まっているように見えた。かつて阪神の東日本統括スカウトだった菊池敏幸はこう語る。
「一昨年に見た時は、これじゃドラフトにかからないだろうという感じでした。しかし、その後は意識の変化によって大きく成長しましたね」
大学2年までの成績は2勝6敗、防御率4.27。高校時代の輝きからすれば、“普通の投手”になっていた。早川自身も、「正直、大学に入ってすぐの頃は、絶対にプロに行くという気持ちでもなく、教員免許を取って指導者の道に進むことも視野に入れていました」と語っている。