残り物に福があるのか。それとも、早く引いたほうが有利なのか──。今年のプロ野球ドラフト会議は、早稲田大の早川隆久投手、近畿大の佐藤輝明内野手に各4球団の入札があった。抽選の末、早川は楽天、佐藤は阪神が交渉権を獲得。ともに2番目にクジを引いた球団だった。佐藤を指名した巨人は、ドラフト1位の抽選で10連敗となった。
1965年のドラフト開始以降、1位指名で4球団以上の競合は32回ある。そのうち、4番目以下にクジを引いた球団の交渉権獲得は7回で、21.9%(小数点2位以下を四捨五入。以下同)しかない。
すなわち、3番目までに抽選箱に向かった球団が78.1%の確率で交渉権を引き当てている。その内訳は、クジ引き順の1番が31.3%、2番が各25%、3番が21.9%である。つまり、2番目までに引ければ56.2%という理論値よりも高い確率で、当たりクジに巡り合える。例えば、1966年の江夏豊は阪神、巨人、阪急、東映の4球団が競合して1番の阪神・戸沢一隆球団代表、2009年の菊池雄星は西武、阪神、ヤクルト、楽天、中日、日本ハムの6球団が集中して1番の西武・渡辺久信監督が引き当てている。
このように過去のデータを見れば、早く引けば引くほど有利のように思える。だからといって、抽選順の遅い球団が大物を指名回避すべきとも言い難い。
1979年の岡田彰布は6球団の中で4番目の阪神、1985年の清原和博は6球団の中で5番目の西武が獲得。岡田は主軸として1985年の日本一に貢献し、引退後は監督として2005年に20年ぶりの優勝を果たした。清原は西武在籍11年で8度の優勝、6度の日本一に導き、黄金時代を築いた。
最後まで当たりクジが残っていたのは、1989年の近鉄(野茂英雄・8球団)、1992年の巨人(松井秀喜・4球団)、2010年の西武(大石達也・6球団)、2013年の楽天(松井裕樹・5球団)、2018年の広島(小園海斗・4球団)の5回。野茂は1年目にタイトルを総ナメにしてMVPに輝き、4年目まで最多勝、最多奪三振を取り続けた。松井は巨人の主軸としてMVP3回、首位打者1回、本塁打王3回、打点王3回を獲得した。彼らがいなければ、球団の歴史は変わっていただろう。
巨人は1位指名の4球団以上入札32回のうち14回に名を連ねている。抽選外れの12回を見ると、既に当たりを引かれており、手の施しようのない状態だった。しかし、最初から諦めていれば、1980年の原辰徳(クジ順4球団中3番目)、1992年の松井秀喜という時代を作る4番打者は獲得できなかった。
クジ引きは単なる運でしかない。しかし、挑戦しなければ運を掴めないことも事実である。
■文/岡野誠:ライター、松木安太郎研究家。NEWSポストセブン掲載の〈検証 松木安太郎氏「いいボールだ!」は本当にいいボールか?〉(2019年2月)が第26回『編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞』デジタル賞を受賞。著書『田原俊彦論 芸能界アイドル戦記』(青弓社)の巻末資料では田原の1982年、1988年の全出演番組(計534本)の視聴率やテレビ欄の文言、番組内容などを掲載。