中国全土に1200の塾を運営する補習学校(日本の予備校に相当)チェーン店最大手「優勝教育」の塾が、事前の連絡もなしに閉鎖され、学費を払った保護者や、給料を払ってもらえない従業員ら数千人が10月19日、北京市朝陽区の同社本社ビルに殺到し、「金を返せ」、「給料とボーナスを払え」などの抗議の声をあげた。警察や武装警察部隊が出動し衝突、多数のけが人が出たほか、数人の抗議参加者が身柄を拘束されるなど、近隣のビル街は大きな混乱に見舞われた。
近年、大学受験生が増加している中国。2019年には初めて1000万人の大台を超し、約1031万人が大学を受験、年々受験戦争が苛烈さを増している。ちなみに2019年の日本の大学受験生数は58万人だった。
また、中国の大学は全部で1300校ほどあるが、そのなかでも、北京大学や清華大学を頂点とする国家重点大学はわずかに88大学で、これらの有名大学に入るために補習学校に支払う授業料は、3年間で総額78万元(約1250万円)にも上るという。
香港紙『リンゴ日報』などによると、「優勝教育」の陳昊会長は、新型コロナウイルスの感染流行の影響で、北京市内の塾の収益は前年比75%減になっており、今後経営を立て直して、授業料はのちほど返済することを約束すると語っているという。
陳会長は1999年、優勝教育を創業、北京に加えて、天津、成都、深センなどの中国全土に支部を設立し、1200支部で講師など従業員計10万人を抱えるマンモス補習学校に育てあげた。しかし、株などの資産運用で大きな損失を出したといわれ、経営は年々悪化。今年初めからの新型コロナウイルスの感染拡大で致命的な打撃を受けたとみられる。
深セン市内の7つの支部では、分かっているだけでも、約200人の従業員の給料やボーナス計2000万元(約3億2000万円)が支払われていないという。
19日午後には深セン市内の支部の従業員約50人が集まり今後の対応を協議、「陳会長は本社の経営がうまくいっていないと言うだけで、他の具体的な経営状況を説明しておらず、納得できない。われわれは自分たちの権利を守らなければならない」との意見が出ている。
今後全国の支部の従業員が結束して大規模な労働争議が起きる可能性もでてきているという。