菅義偉内閣が支持率を落としているなか、その目や耳となって動いているのが、警察官僚出身の杉田和博・官房副長官(事務担当)だ。学術会議の人選騒動において会議側が推薦した105人から6人を除外したのも、杉田副長官の主導だとされる。
さらに、菅政権を中枢で支えるもう1人の警察官僚が北村滋国家安全保障局長だ。英語とフランス語が堪能で、警察庁外事情報部長から内閣情報調査室トップの内閣情報官を異例の8年間務めたことから「官邸のアイヒマン」の異名を取り、北朝鮮の拉致問題やロシアとの北方領土交渉も担当してきた。
昨年からは国政全般について首相に情報提供や助言を行なう「内閣特別顧問」を兼ね、内閣官房参与より上位の首相の“最高ブレーン”でもある。その北村氏は菅内閣が発足するとただちに米国を訪問し、ポンペオ国務長官と会談して「日米同盟をさらに強化する方針は変わりない」と首相の外交方針を伝えた。担当の外交や安全保障分野から、貪欲な権限拡張にも乗り出した。経産省中堅官僚が語る。
「国家安全保障局をもっと大きくしたい北村氏は、今年4月に経済班を新設してコロナの水際対策の指揮を取るようになり、来年度からは経済班をさらに拡充して厚労省や農水省、水産庁などからスタッフを入れて感染症対策から先端技術の輸出管理、海洋資源確保、デジタル通貨への対応、IT政策まで権限を広げようとしている。目指しているのは米国のNSA(国家安全保障局)のような巨大情報機関です」
「行革の菅」の足元でそんな構想が進んでいる。官邸官僚の序列は、杉田氏が1位、北村氏が2位と見られている。
※週刊ポスト2020年11月6・13日号