常に「メダル候補」といわれながら、腰痛に苦しみ、2012年のロンドンオリンピック(以下、ロンドン五輪)では代表落ち。しかし、あきらめずに臨んだ2016年のリオデジャネイロオリンピック(以下、リオ五輪)競泳女子200m平泳ぎで金メダルを勝ち取った金藤理絵(32才)。多くの葛藤を抱えながら、五輪に挑んできた金藤に、話を聞いた。
* * *
私に水泳を教えてくれたのは、高校で体育教師をしていた父です。父は元陸上選手でしたが、腰を悪くしてからは水泳もしていました。それがきっかけで小学3年生のときに、5才上の兄と3才上の姉と一緒にスイミングクラブに通いました。
私が生まれた広島県庄原市は県内でも気温が低く、冬になると雪が降る地域でしたが、地域に温水プールはなかったので、春や夏のオンシーズンは毎日みっちり泳ぎましたが、オフシーズンは、バレーボールやスキーをしていました。
〈身長175cm、手足の長い恵まれた体形に加え、生まれ持ったセンスのよさで、本格的に水泳を始めるとすぐに大会の選手に選ばれ、小学4年生で県内の公式試合に出場。中学、高校と進むにつれ注目度も上がり、広島県立三次高校時代には、インターハイ(女子200m平泳ぎ)で優勝。将来を有望視される。いずれトレーナーになることも考えて、大学はトレーニング技術が学べる東海大学体育学部を選択。同大学に加藤健志コーチがいたことも進学の大きな決め手だった〉
どんなに苦しいことがあっても、コーチが私を信じ続けてくれたから、私は金メダルを取ることができたと思います。
コーチからは練習以外にもさまざまなアドバイスをもらいました。
たとえば、リオ五輪でも中高生の女子選手が5人選ばれているように、男性よりも女性スイマーの方が若手の活躍が目立ちます。だけど、せっかく代表に選ばれても、思春期を過ぎると体が思うように動かなくなり、やめていく子も少なくない。
私は大学生のときに体の変化を感じたのですが、そのときに、「女性は月経が始まり、年齢とともに脂肪が増えるなど体つきも変化するから、小学生の頃と同じ感覚を求めてはいけない」と言われていました。そのときはすぐに理解はできませんでしたが、いま考えると、水泳選手だけではなく、誰にでも訪れる年齢的な変化をマイナスに捉えるのではなく、自然なことと受け止めて、前を向いていくことの大切さを教えてくれたのだと思います。
取材・文/廉屋友美乃
※女性セブン2020年11月5・12日号