誰もが憧れるものの、なかなか現実にならない夢の馬券生活。調教助手を主人公にした作品もある気鋭の作家で、「JRA重賞年鑑」にも毎年執筆する須藤靖貴氏が、一貫してぶれない穴党の立ち居振る舞いを参考に、穴予想と向き合うメンタルについてお届けする。
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外れても動じない、穴党トラックマン。今回は「そんな穴予想を目にしたときのメンタル」である。
そのブレない馬券購入への姿勢を尊敬している穴党トラックマン氏はネット投票をせず、後輩のAが代理で買う。渡された情報をAはどう思うのか。「3連複のヒモに加えるくらいは……」。少しは影響されるのである。だが根幹の予想は変えない。「それをやると、誰の馬券? ってことになるし。仮に大穴が的中しても、決して後悔しないと決めている」。おっしゃるとおり。
穴党氏とAの関係は特殊ではなく、われわれにもあてはまる。予想の埒外だった馬が、妙な説得力を伴って胸に飛び込んでくる。穴情報に常に遭遇するAのスタンスを見倣いたい。
潔いのが「一顧だにせず」。決めた予想を揺らさない。だが、豊かなリターンをもたらす(かもしれぬ)印に誘惑の甘い匂いを感じるのも人情だ。
そこで穴馬を推す論拠を見る。論が豊かならば検討してみる。「〇〇秒は優秀な時計」ならば説得力があるけど、そんな馬は人気薄にはならない。調教の印象や厩舎関係者コメントは論理性に乏しく、大穴馬はファクト以外の「何か」が論拠になることも多い。「前走は出遅れ、前々走は不利を食らった。敗因は明確」って、連続でヘマこいてどうする。敗因こそ明確だが、それでなぜ◎なのか。
前にも「ポツン◎」の予想に乗って失敗した。15頭中13番人気の6歳牝馬の◎論拠は「前崩条件」。しかし不良馬場で先行力のある馬が複数いて、前の3頭ですんなり決着。7着に健闘したものの、きっぱりと切るべきだった。