温かい鍋物やラーメンが恋しい時季だが、街中のラーメン店ではコロナ禍の影響を受けた倒産が過去最高の勢いで続いている。一方、家で食べる即席麺の人気が急上昇。中でも袋麺の売り上げは一時販売量が落ち込んでいたものの、再びプラスに転じているようだ。袋麺人気復活の背景について、ジャーナリストの山田稔氏がレポートする。
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コロナ禍が長期化する中、飲食店の苦境が続いている。Go Toイートが話題になっているが、多くの店では客足は戻り切っていない。それどころか飲食業界は「飲食店の倒産 上半期392件 過去最高」(帝国データバンク/10月13日発表)という厳しい状況下にある。
ラーメン店も深刻だ。帝国データバンクの調査では9月までに34件の倒産が発生し、過去20年で最多となりそうだという。コロナ禍の影響で飲食業界全体が売り上げ低下に見舞われている中、競争が激しいラーメン業界で他店との差別化ができず脱落していく店が続出しているのだ。
その一方で元気なのが即席麺業界である。袋麺やカップ麺など即席麺事業を手掛ける上場4社の2020年4─6月期の即席麺事業の合計売上高は948億円となり、前年同期に比べ8.8%の増収となった。コロナ禍における“巣ごもり需要”の高まりが業績を押し上げたと見られている。
業界大手の日清食品の4─6月期連結決算は、売上高が前年同期比13.9%増の1205億円、営業利益は2倍の174億円、純利益も2.1倍の120億円と絶好調だ。カップ麺、袋麺ともに日本だけでなく、中国、米国などでも売り上げを伸ばした。
即席麺(カップ麺と袋麺)の人気化は総務省の家計調査(2人以上の世帯)でも明らか。2020年1─8月の消費合計額は4775円。前年同期の4124円に比べ、15.8%増。袋麺に限ってみると25.4%増となっている。袋麺人気の高まりが分かる結果だ。
巣ごもり生活で調理の手間も厭わず
そもそも袋麺の市場規模はどのくらいなのだろうか。日本即席食品工業協会に問い合わせてみた。すると返ってきたのは想像をはるかに上回る数字だった。
・2019年度(2019年4月~2020年3月)/総需要17億1610万食、出荷額(推計)1279億1700万円
・2020年度(2020年4月─8月)/総需要8億8492万食(前年同期比35.9%増)、出荷額671億4000万円(同39.8%増)
なんと、年間で17億食超の袋麺が人々の胃袋に収まっているのだ。スゴイ食文化である。今年の総需要はまさにコロナ禍におけるもので、5か月間ですでに昨年1年間の51.6%に達している。金額ベースでは52.5%で、今年度の1か月平均134億円は昨年度の106億円を大きく上回っている。袋麺人気の急上昇をハッキリと裏付ける数字だ。