トランプ大統領の猛烈な追い上げで、投票日直前になって大接戦に戻ったアメリカ大統領選挙。が、実は“もう決着はついている”のである。なぜなら、有権者の多くがすでに期日前投票を済ませているからだ。ただし、本当に決着するのはずっと先になる可能性もある。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏が読み解く。
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アメリカで選挙に勝つための鉄則は、決して逃げの姿勢を取らないことだ。攻撃は最大の防御であり、攻撃し続け、決してデフェンスに回らないことが肝心だ。トランプ氏は、事実であるかわからないことでも、徹頭徹尾、バイデン氏のスキャンダルであると言い続け、それをバイデン氏の反論の10倍でも20倍でも口にすることで、いつの間にか有権者に「そうなのかも」と思い込ませることに成功している。
一方で、バイデン=ハリスの連合軍は、勝利の鉄則に従っていない。あれだけ情勢が味方し、もはや勝利は目の前にありながら、攻撃の手を緩めたことでトランプ軍の追撃に遭っている。少なくても世論調査結果ではそうである。
簡単に言えば油断が生じたのである。バイデン氏は、トランプ氏が激戦州を駆け回っている間、地元に帰って後援者の前でのんびり演説し、あとはメールによるキャンペーンに頼った。筆者の元には、バイデン=ハリス軍から毎日20通を超える、寄付を求めるメールが届く。その数は選挙戦終盤になってますます増えている。ここまできてまだ寄付集めを優先しているのは的外れだ。なかには、「25ドルの寄付は、我々のメール代と思え」としか解釈できない文面もある。なんという言い草か。これでは支持者が盛り上がらない。
しかし、それでもバイデン氏がまだ有利と言えるのは、すでに期日前投票が8000万票に達し、最終的な投票数は1億5000万票にまで増えると予測されていることだ。つまり、最終盤でトランプ氏が並んだとしても、すでにリードを許している間に有権者は投票を終えてしまったという可能性が高いのだ。世間調査では、期日前投票でのバイデン氏のリードは、有権者全体のリードより大きいとされている。
ところで、いよいよ各州の情勢が固まりつつあるなか、筆者が一番注目するのはフロリダ州の戦いである。激戦州のなかでも最も選挙人の数が多い(したがって大統領選挙の結果に影響が大きい)フロリダで、もしトランプ氏が負けることがあれば、そこでゲームセットである。トランプ氏には、まだ逆転勝利の可能性が残されているものの、それは激戦州のほとんどを制した場合である。その最大の戦いであるフロリダを落とせば万事休すだ。