国内

「60%以上の人がコロナになれば終息」 集団免疫論は妥当か

Go To トラベルなどの経済振興策で観光地は再び密状態に(時事通信フォト)

Go To トラベルなどの経済振興策で観光地は再び密状態に(時事通信フォト)

 再び新型コロナの感染拡大が世界で進んでいる。アメリカでは第3波、ヨーロッパでは第2波の感染拡大がみられ、フランスでは新たなロックダウン(都市封鎖)措置も取られている。日本では爆発的な感染拡大はないものの、感染者数の累計は10万人を超え、なお微増傾向が続いている。そんな中、今後は「集団免疫」が確立して自然に終息に向かう──との見解が海外の研究者グループから出始めた。この集団免疫論をどうみるべきか、ニッセイ基礎研究所主席研究員の篠原拓也氏が考察する。

 * * *
 世界全体でみると、新型コロナの感染拡大は進んでいる。インフルエンザと同様、ウイルスは気温が下がる冬の季節に、猛威を振るう恐れがあるとみられる。一方、ワクチンはまだ導入されておらず、感染拡大防止の切り札はない。欧米諸国や日本などで、冬の感染爆発の懸念が高まっている。

 こうした中で、9月にある研究報告が公表された。ブラジルのある地域では、社会に感染が広がったことで免疫を持つ人が増えて、「集団免疫」を達成して感染が自然に終息に向かうというものだ。自然感染に委ねることで、本当に集団免疫は確立するのだろうか? 少し考えてみたい。

ワクチンがない中での「集団免疫論」

 まず、そもそも集団免疫とはどういうものか、みていこう。

 新型コロナに限らず、感染症の拡大防止には、「集団免疫」が重要とされている。これは、集団内に免疫を持つ人が多ければ、感染症が流行しにくくなることを利用した感染拡大防止の考え方を指す。具体的には、ワクチンの予防接種等により、集団内の免疫保持者を一定割合まで高めておくことを意味する。

 感染症の感染力をみるうえで、「基本再生産数」という概念がある。これは、ある感染症にかかった人が、その感染症の免疫を全く持たない集団に入ったときに、直接感染させる平均の人数を表す。新型コロナの基本再生産数については、これまでに諸説あるが、世界保健機関(WHO)は、暫定的に1.4~2.5と示している。

 仮に、基本再生産数が2.5だったとしよう。この場合、10人の感染者から2.5倍の25人に感染が拡大する。もし、この25人のうち、15人以上が免疫を持っていれば、感染するのは残りの10人以下に抑えられるだろう。10人から10人以下に感染――徐々に感染させる人数が減っていけば、いずれ終息するはずだ。

 このように、25人のうち15人以上、つまり60%以上の人が免疫をもっていれば、感染は終息する。免疫を獲得するにはワクチンの予防接種が必要だ。だが、残念ながら新型コロナのワクチンはまだない。

 そこで、こんな考えが出てくる。予防接種を打たずとも、実際に新型コロナにかかって免疫を獲得してしまえば、同じ効果があるはずだ。3密回避などの予防策を一切とらずに、多くの人が感染すれば、集団免疫が機能して、いずれ感染は終息に向かう──これが、自然に集団免疫が確立するという「集団免疫論」の考え方だ。

関連記事

トピックス

近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
【エッセイ連載再開】元フジテレビアナ・渡邊渚さんが綴る近況「目に見えない恐怖と戦う日々」「夢と現実の区別がつかなくなる」
NEWSポストセブン
『続・続・最後から二番目の恋』が放送中
ドラマ『続・続・最後から二番目の恋』も大好評 いつまでのその言動に注目が集まる小泉今日子のカッコよさ
女性セブン
事務所独立と妊娠を発表した中川翔子。
【独占・中川翔子】妊娠・独立発表後初インタビュー 今の本音を直撃! そして“整形疑惑”も出た「最近やめた2つのこと」
NEWSポストセブン
名物企画ENT座談会を開催(左から中畑清氏、江本孟紀氏、達川光男氏/撮影=山崎力夫)
【江本孟紀氏×中畑清氏×達川光男氏】解説者3人が阿部巨人の課題を指摘「マー君は二軍で当然」「二軍の年俸が10億円」「マルティネスは明らかに練習不足」
週刊ポスト
田中圭
《田中圭が永野芽郁を招き入れた“別宅”》奥さんや子どもに迷惑かけられない…深酒後は元タレント妻に配慮して自宅回避の“家庭事情”
NEWSポストセブン
ニセコアンヌプリは世界的なスキー場のある山としても知られている(時事通信フォト)
《じわじわ広がる中国バブル崩壊》建設費用踏み倒し、訪日観光客大量キャンセルに「泣くしかない」人たち「日本の話なんかどうでもいいと言われて唖然とした」
NEWSポストセブン
ラッパーとして活動する時期も(YouTubeより。現在は削除済み)
《川崎ストーカー死体遺棄事件》警察の対応に高まる批判 Googleマップに「臨港クズ警察署」、署の前で抗議の声があがり、機動隊が待機する事態に
NEWSポストセブン
北海道札幌市にある建設会社「花井組」SNSでは社長が従業員に暴力を振るう動画が拡散されている(HPより、現在は削除済み)
《暴力動画拡散の花井組》 上半身裸で入れ墨を見せつけ、アウトロー漫画のLINEスタンプ…元従業員が明かした「ヤクザに強烈な憧れがある」 加害社長の素顔
NEWSポストセブン
趣里と父親である水谷豊
《趣里が結婚発表へ》父の水谷豊は“一切干渉しない”スタンス、愛情溢れる娘と設立した「新会社」の存在
NEWSポストセブン
米利休氏のTikTok「保証年収15万円」
東大卒でも〈年収15万円〉…廃業寸前ギリギリ米農家のリアルとは《寄せられた「月収ではなくて?」「もっとマシなウソをつけ」の声に反論》
NEWSポストセブン
SNS上で「ドバイ案件」が大騒動になっている(時事通信フォト)
《ドバイ“ヤギ案件”騒動の背景》美女や関係者が証言する「砂漠のテントで女性10人と性的パーティー」「5万米ドルで歯を抜かれたり、殴られたり」
NEWSポストセブン
“赤西軍団”と呼ばれる同年代グループ(2024年10月撮影)
《赤西仁と広瀬アリスの交際》2人を結びつけた“軍団”の結束「飲み友の山田孝之、松本潤が共通の知人」出会って3か月でペアリングの意気投合ぶり
NEWSポストセブン