いよいよ大詰めとなるプロ野球。タイトル争いも盛り上がるが、過去に首位打者をかけたこんな名バトルがあった──。
1987年のプロ野球セ・リーグでは、巨人の篠塚利夫(現・和典)と中畑清、中日の落合博満、広島の正田耕三が熾烈な首位打者争いを演じた。まず中畑が脱落し、続いて最終戦無安打の落合が篠塚に1厘及ばず全日程を終了。唯一、篠塚を上回る可能性があった正田は最終戦でヒットを放って篠塚に並び、滑り込みで同率の首位打者を獲得した。当時、正田とチームメイトだった達川光男氏が語る。
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前年にリーグ制覇した広島が2年連続の優勝を目指したシーズンで、チームが個人タイトルのアシストをするのが難しい年だった。僕もチーム防御率を改善するため自分のことで精一杯だった。
四つ巴の首位打者争いは最後までもつれましたが、正田は最終戦でセーフティバントを決めて打率首位の篠塚に並んだ。ベンチも休ませたり出したりと協力したが、自分の長所である足を生かしてもぎ取ったタイトルと言えるじゃろうね。
彼は広島伝統の猛練習をこなし、重いすりこぎ型のバットでゴロ打ちに徹した。当時、本塁打ゼロの首位打者は初で、スイッチヒッターの首位打者もプロ野球史上初の快挙と騒がれた。左打ちを始めて2年後のこと。露骨な敬遠合戦などが残る時代に、自分の力で首位打者になったのだから大したもんだよ。
今は昔と違って醜いタイトル争いがない。
例えば10月5日の阪神-巨人戦では、巨人先発の桜井が、同僚の岡本と本塁打王争いをする阪神の大山と真っ向から勝負して、バックスクリーンに打球を叩き込まれました。これこそプロ野球のあるべき姿。この先も正々堂々とした勝負によるタイトル争いが楽しみじゃね。
※週刊ポスト2020年11月6・13日号