拘置所の中で刑の執行を待つ身である確定死刑囚たちによる絵画や詩歌などを展示する「死刑囚表現展」。死刑廃止を訴える市民団体による主催で毎年開催されており、今年は10月23~25日にかけて東京・松本治一郎記念会館で開かれた。
出品者は23人。上田美由紀(鳥取連続不審死事件、2004~2009年)、風間博子(埼玉愛犬家連続殺人事件、1993年)、加藤智大(秋葉原通り魔事件、2008年)、山田浩二(寝屋川中学生殺害事件、2015年)など、社会を震撼させた重大事件の犯人たちの作品が並ぶ。
この展示会、例年は死刑問題に関わる人や死刑囚たちの支援者など、ごく限られた人たちが集まるものだったのだが、今年は違った。
記者が会場に到着すると、1階エレベーター前には行列が発生し、会場入り口では一時、入場制限まで行なわれていたのだ。
列に並んでいたのは大半が20代~30代ほどの若者たち。彼らの目当ては相模原障害者施設殺傷事件の植松聖死刑囚の作品だった。開催の前日、神奈川新聞紙上で、植松が初出品することが報じられ、ネットで話題となったためだろうか。
植松の作品は、『より多くの人が幸せに生きるための7項目』と題され、「安楽死の法制化」「大麻合法化」「美容整形の推進」などの独自の主張が角2サイズの茶封筒4枚に書き連ねられたもの。会場内では、植松の作品の前で常に10人ほどの若者らが長らく足を止め、食い入るように見入っていた。そのなかにはデート中と思われるカップルもいた。
建物の外に出ると、興奮した様子で友人に電話する若者の姿も。「見た見た。スゲエよ、植松。絶対、見たほうがいいって」。
この「死刑囚表現展」は、原則、外部との接触が禁じられている確定死刑囚たちの貴重な外部発信の機会とされている一方、「被害者や遺族に対する配慮が欠ける」「死刑囚に表現の自由を与えていいのか」などの強い批判も根強くある。
列をなしていた若者たちは、そのような問題を理解したうえで作品を見ていたのだろうか。
◆取材・文/小川善照(ジャーナリスト)