〈0円しぶこ、140人抜き女王だ〉〈米国遠征の成果見せる〉──渋野日向子(21)の4か月ぶりとなる国内復帰戦「樋口久子・三菱電機レディス」の初日(10月30日)のスポーツ紙の見出しだ。
いくらなんでもやり過ぎだろう。
昨年の全英女子オープンを制してスターとなった渋野は今季、長いトンネルのなかにいる。全米女子プロは58位、国内復帰戦も予選落ちに終わり、獲得賞金は「ゼロ」だ。ランキング1位の笹生優花(19)とは約7000万円の差があり、“逆転賞金女王”などはるか遠い。にもかかわらず、メディアは“シブコ頼み”だ。
「業界的にはまだ“渋野は数字を持っている”という認識です。テレビ中継は視聴率のために渋野を追い、スポーツ紙は販売側の意向もあってなんとか渋野を絡めたニュースを探そうとしている」(LPGA関係者)
とりわけ恩恵があるのはギア業界だ。都内のゴルフショップ店主がいう。
「渋野プロが使ったPINGのドライバー『G410』は爆発的に売れたし、8月末に後継モデル『G425』が発表されると試打の予約が殺到した。発売は9月18日で渋野プロが米ツアーで苦戦の続く時期でしたが、クラブは売れに売れている。予約しても3週間待ちで、前作のひと月の売り上げを1週間で超えた」
“去年のシンデレラガール”で商売になるわけだが、獲得賞金ゼロで賞金女王の可能性を取り沙汰されては、本人が気の毒だ。辛口評論で知られるゴルフジャーナリストの菅野徳雄氏はこういう。
「スポンサーの顔色を見るなどして厳しいことをいわないのが日本のゴルフ記事や解説の悪いところ。解説ではなく応援になっている。厳しいことをいわないと選手のためにもならない。渋野も素材としては素晴らしいのだから、持ち上げ続けるのはいかがなものか」
復活優勝でスマイルを取り戻したというニュースが早く見たい。
※週刊ポスト2020年11月20日号