江原啓之さんと鈴木秀子さんが対談を重ね、「幸せの処方箋」を提示した『日本人の希望』が刊行され話題になっている。江原さんはこの書の冒頭で、これから自殺者が増えるだろうという危惧があると語ったが、今夏以降、自殺者が急増。江原さんの危惧は現実のものとなってしまった。今回、ふたりに改めて、急増する自殺者を防ぐためにいま、何をしたらいいのか、どう考えればいいのかを語ってもらった。
江原:このところ、有名人による自死が続き、動揺している人も多いのではないでしょうか。
鈴木:実は私もちょっとドキッとしました。竹内結子さんのお家は私が暮らしている場所のすぐお向かいなので、こんなに身近な人がと思いまして。でも本当は誰がいつ自ら命を絶ってしまうかわからないのです。自死は決して他人事ではありません。
江原:あんなに恵まれた人がなぜ? と首を傾げる人もいるようですが、それは想像力の欠如であるといえるでしょう。多くの人が竹内さんを見て羨ましいと思うのは、美人だとか、裕福だといった物質的な幸せですが、竹内さんに限らず、どんな人だって外側からは見えない憂いを抱えているもの。人の心は物質的にどんなに恵まれていても、それだけで満たされるということはないのです。
鈴木:それもそうですし、Aさんにとってはなんでもないことが、Bさんにとっては耐えがたいということもあります。ですから、この人の苦しみは軽いとか、重いなどと他人が決めつけることはできないと私は思うのです。
江原:同感です。人の心の体力には個人差があります。では心の体力をどうやって培うのかといえば、さまざまな経験を積むしかないのです。
鈴木:本当にそうですね。幾度も通った険しい山道なら覚悟もあるし、厳しさ加減もわかりますが、初めて山を越えるときはただただ苦しいのみでしょう。
江原:しかも近視眼的になってしまいがちなのです。もっと広い視野で出来事を見つめれば、必ず救いがあるはずなのに……。
鈴木:真面目な人ほど思い詰めてしまいがちなのでしょう。
江原:真面目の定義は難しいのですけれど……。絶対にいま、結論を出さなければと考える人だけが真面目なのではなく、あえて先送りにしようと考える人だって真面目なのでね。「ま、いいか」と流してしまえる人に対して、自死を選ぶ人は融通性に欠けるということはいえるかもしれませんね。