人工知能研究者の黒川伊保子氏がベストセラー『妻のトリセツ』『夫のトリセツ』に続いて上梓した『娘のトリセツ』(小学館新書)が話題を呼んでいる。いくつになっても娘は可愛く、そして悩ましい。それはどんな家庭でも変わらない……「大人になった娘のトリセツ」を黒川氏が開講する。
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〈幼い頃は「大きくなったらパパと結婚する!」と言っていた娘が、中高生になったら「お父さんは臭い」と言い出して邪険に扱うようになり、娘が成人してもそのままギクシャクした関係が続いている人は多い〉
思春期の娘に「お父さん、臭い」と言われて傷つく男性は多いですが、これは優秀な子孫を残すため、自分と似ていない免疫の型を持つ相手の匂いを好ましく思い、反対に免疫の型が同じ父親の匂いは臭いと感じてしまうという女性の脳に起きる現象が原因です。お父さんの責任ではないし、思春期を過ぎると落ち着いてくるので、あまり気にする必要はありません。
ただ、思春期にはもう一つ大きな変化があります。哺乳類の雌は、生殖可能期間に入ると、脳が強い警戒モードに入ります。自分の身や子供を守らないと生殖を完遂できないので、外界からの働きかけには「これは攻撃!?」と身構え、イラつくようになるのです。
たとえば、出かけるときに、父親から「どこへ行く?」「何時に帰る?」と聞かれただけで、「どこをフラフラほっつき歩くんだ」という攻撃の言葉に聞こえる。
男性はこういう「いつ」「誰と」「どこへ」といった5W1Hの質問から会話を始めがちで、男性同士なら問題ないのですが、女性は「威嚇されている」と感じてしまうのです。
それは成人でも同じです。娘が思春期の頃からずっと5W1Hの質問を続けて、いつのまにか娘との会話はなくなってしまったということはよくあります。
※週刊ポスト2020年11月20日号