連日のアメリカ大統領線の開票速報に「いつ大統領が決まるのだろう?」と疑問を抱いた人もいただろう。バイデン氏が僅差で勝利したが、まだ決着はついていない。さらにアメリカ国内では、バイデン派とトランプ派の衝突を危惧する声も聞こえてくる。「偉大なアメリカ」で、いま何が起こっているのか──。
日本時間11月8日未明、現地メディアが民主党ジョー・バイデン候補(77才)の当選確実を報じた。バイデン氏は「分断でなく団結させる大統領になる」と勝利宣言を行ったが、対する共和党ドナルド・トランプ大統領(74才)は「選挙に不正があった」と主張し法廷闘争に持ち込む構えで、いまだ敗北を受け入れる姿勢を示していない。2017年の就任当時から「型破り」なスタイルを貫いてきたトランプ氏らしいともいえる。アメリカの情勢に詳しいジャーナリストの中岡望さんが解説する。
「1896年の米大統領選挙以降、負けた候補が勝者に祝福のメッセージを送り、“敗北宣言”をする伝統があります。『戦いが終わったのだから、お互いアメリカのために協力しましょう』という美徳なのですが、トランプ氏はこれを124年ぶりに破る可能性が出てきています」
今回の選挙では、新型コロナウイルス対策として、1億人以上が郵便などの手段で期日前投票を行った。フロリダ大学教授らが運営する選挙データサイトの集計によれば、投票率は66.4%という記録的な高さだったという。いかに多くのアメリカ国民が今回の大統領選に関心を寄せていたかがわかる。
得票数も前代未聞の数字になった。これまで、2008年のオバマ前大統領の6940万票が過去最高得票数だったが、バイデン氏の得票数は7400万票を超え、そればかりか、“敗者”のトランプ氏も7000万票超を集めたのだ。
トランプ氏はメラニア夫人(50才)が敗北宣言をすすめても聞く耳を持つ気配はない。
「アメリカ大統領選挙は過半数の『選挙人』を獲得した候補者が当選となる仕組みですが、選挙人を確定できなければ、来年1月招集の新たな議会で下院が新大統領を選ぶルールになっています。連邦下院ではトランプ氏の共和党が25州で過半数を占めることが確実になっているので、逆転もありえるのです」(在米ジャーナリスト)
すでにアメリカは“バイデン新大統領”を見据えた雰囲気が醸し出されつつあるが、下院での投票へともつれ込ませたいトランプ氏は徹底抗戦の構えだ。