アメリカ大統領選は、民主党のジョー・バイデン候補が270人以上の選挙人を獲得して勝利したと報じられている。しかし、共和党の現職ドナルド・トランプ大統領は敗北を認めておらず、法廷闘争に持ち込む構えを見せている。2016年の選挙では、事前に行われた世論調査と選挙の結果が真逆となり、調査のあり方が問題となったが、今回の選挙では概ね世論調査通りの結果となった。いったいどのように調査は改良されたのか──。ニッセイ基礎研究所主席研究員の篠原拓也氏が考察する。
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今年のアメリカ大統領選は、全世界から注目された。開票では民主・共和両党の候補者が大接戦を演じる州が多く、投票日後なかなか「当選確実」の判定が出ない異例の事態となった。
なかなか判定が出なかったのは、激戦州と呼ばれたいくつかの州で、郵便投票や期日前投票が多く、これらの開票に時間がかかったことが原因として挙げられている。選挙日当日に投票された票と、郵便投票等での票では、投票結果が大きく異なっていた。
当初、トランプ大統領が優勢とされていた州でも、郵便投票等の開票が進むにつれて、バイデン候補が得票数を伸ばし、最終的には逆転して勝利するというドラマチックな展開がみられた。
当選確実がなかなか出なかった背景には、もう1つ原因がある。大手メディアは2016年の前回選挙で、世論調査と選挙結果が全く異なるという失敗を犯した。このことが各メディアのトラウマとなっていて、当選確実の判定を出すのに慎重になった、といわれている。
開票の当初は、トランプ大統領優勢の報とともに、「世論調査がまた外れた」との風評が巻き起った。たとえば、選挙人の数が29人と多く、重要州とみられていたフロリダ州をトランプ大統領が制したと報道された直後には、今回も選挙結果が世論調査と真逆になるのでは? との見方が広がった。