今冬の各企業のボーナスは、一にも二にもコロナの影響が反映される。巨額の赤字を出している航空業界や旅行業界が厳しいことは誰の目にも明らかだが、影響の見えにくい業界、あるいは業界内のライバル同士でも様々な要因で明暗が分かれている。『週刊ポスト』(11月16日発売号)では主要企業の冬のボーナスを総力調査して詳報しているが、それに先立って「微妙な業界」の内情をお伝えする。
自動車業界は各社事情がまちまちのようだ。トヨタは「中国さまさま」だという。法政大学大学院政策創造研究科教授の真壁昭夫氏はこう分析する。
「コロナの影響はあったはずですが、高級車『レクサス』が中国で販売好調です。中国政府がハイブリッド車を低燃費車と認めて優遇策を取ることを決めたこともあり、トヨタはハイブリッド技術を輸出できるようになった。今後も業績見通しは明るいですね」
トヨタはボーナスを通期で交渉するため、すでに夏冬合計6.5か月と決まっているが、もちろん引き下げなどはなく満額支給になる。逆に中国経済の影響で冬のボーナスが2割以上減ることが決まったのが三菱自動車だ。
「三菱は国内の業績も芳しくありませんが、一時期の中国の景気低迷で、もともと強かった東南アジアでも売れ行きが落ちたことが痛手でしたね。その他、ホンダは通期で黒字見通しと頑張っている一方、ゴーン元会長のスキャンダルでブランドイメージが落ちた日産も厳しそうです。自動車業界は各社各様ですね」(真壁氏)
もっとも、王者・トヨタにとって心配なのが「バイデン大統領」だという。『経済界』編集局長、関慎夫氏の指摘だ。
「バイデン氏は、自分が大統領になったら温暖化対策のパリ協定に復帰すると公言していて、今後はアメリカで排気ガス規制が強化されることが予想されます。トヨタはハイブリッドが大きな財産ですが、これが環境対応車と見なされなくなるおそれがある。もちろん同社もEV(電気自動車)や燃料電池などに取り組んでいますが、過去の成功があるだけに、切り替えには他社より時間がかかるかもしれません」