あらゆる人が使いやすいユニバーサルデザインや地球環境に配慮したエコロジー素材の開発など、パッケージは社会と密接に関わり合いながらデザインや機能性を日々進化させている。
ひとくちにパッケージと言ってもその内容は消費者が日常で手にする商品パッケージに留まらない。他にも通販などの輸送包装や物流、販売促進のPOPを兼ねるものなど多岐にわたる。印刷博物館で開催中の「現代日本のパッケージ2020」展でキュレーターを務める寺本美奈子氏は、その利便性と魅力について語る。
「開催中の『現代日本のパッケージ2020』展では、今年催されたパッケージコンクールの受賞作を展示しています。キーワードの一つは『省力化』。計量の手間を省いて初めて家事をする男性や高齢者の参加を応援する衣料用洗剤や販売員の作業を軽減する組み立てが簡単な販売促進ツール、患者に負担がかからない設計の医療用製品、小さな力で噴霧できるヘアスプレーなど、多様化するユーザーのニーズを敏感に汲み取った利便性の高いパッケージが評価を得ています」
商品の顔であるパッケージは現代を映す鏡でもあるのだ。
使い勝手の変化により、新しいパッケージが生み出された例を紹介しよう。
●アタック(花王)
1987年発売の世界初のコンパクト衣料用洗剤・アタック。従来の粉末、液体、濃縮タイプに加えて2019年には取っ手のグリップ操作で簡単に1回分が投入できる新商品が登場、デザインも刷新。暮らしの変化にあわせて革新を続ける。第59回ジャパンパッケージングコンペティション「経済産業大臣賞」受賞。
●3Mキャビロン皮膚用リムーバースプレー(スリーエム ジャパン株式会社)
患者の容態や患部の位置によって横向きでも逆さでも使用可能な、360度噴霧できる容器を開発。高齢者や握力の低い人も使いやすいトリガースプレーを採用し、ノンガスタイプで廃棄しやすいなど、使用する側・される側双方に寄り添う仕様となっている。2020日本パッケージングコンテスト「消費者団体推薦賞」受賞。