ライフ

妻を「嫁」と呼んで謝らなければいけない時代にあえて物申す

夫婦関係

夫婦関係もいろいろ

 口は災いの元、そう感じることが少なくない日々である。大人力について研究するコラムニストの石原壮一郎氏が指摘する。

 * * *
〈こちらのツイートで、「妻」とするところを「嫁」としてしまい、不適切な表現となってしまいました。ご指摘いただきまして誠にありがとうございます。今後気をつけて参ります。1号〉

 靴下屋やTabioなどのブランドを運営するTabioのツイッター公式アカウント「Tabio 靴下屋」が、11月4日にこんな謝罪ツイートをしました。これは、その2日前に同じアカウントが以下のツイートをし、たくさんの批判が寄せらことに応えたもの。

〈ところで、明日は休日ですね!皆さんは何します!? 私は、嫁から「とりあえずこれを読め」と佐々木倫子先生の「Heaven?」を全巻渡されたので読みます。(ドラマ版を見ていて、「これ原作見てないわ」と言ったら、速攻でした。)1号〉※いずれのツイートも改行は省略

 どうやら「嫁」という表現を使ったことが「ケシカラン!」とされたようです。そういう考え方があるのは承知していますが、わざわざ文句を付けることでしょうか。夫婦仲のよさが伺える、素敵なツイートではありませんか。

面倒臭い批判をかわして逆に好感度を上げようという狙いがあったんだとは思いますけど、Tabio 靴下屋さんが「不適切な表現」と言ってしまったことも残念です。「嫁」と「読め」をかけたつもりが、うまく伝わらなかったことを反省するならともかく。

「嫁」という字は女性を家の従属物として扱っているからよくない──。大学の「女性論」のゼミで先生からそういう話を聞いて、なるほどと思ったのは、かれこれ40年近く前のことです。「家内」は女性は家の中にいるものだという前提の押しつけだし、「主人」は主従関係に基づいているからダメという話もありました。

 当時はまだまだ家父長制とか家至上主義みたいなのが残っていて、その価値観に縛られていることを自覚するために、「『嫁』という字は女偏に家であり……」みたいなこじつけの屁理屈にも、ある程度は意味があったかもしれません。しかし、令和になった今、そんな古式ゆかしい言説を振り回するのは、あまりにも的外れです。たまたま聞きかじって、嬉しくて言ってみたいのかもしれませんけど。

「妻」「嫁」「家内」「女房」「ワイフ」「ウチのカカア」などなど、男性が結婚相手のことを指す言葉はさまざま。女性が結婚相手を指す言葉も「夫」「主人」「旦那」「亭主」「ダーリン」「ウチの宿六」など多種多彩。どちらにも使えて「対等っぽさ」を強調している「パートナー」「配偶者」という言葉もあります。

「漢字の意味として」と言い出したら、じつはキリがありません。「嫁」のつくりの部分の「家」は、屋根の下に家畜がいることを示しているという説もあります。家畜を守る存在が「嫁」となると、家畜がいない家庭では使うことがはばかられます。「男」という字にしたって、田んぼを耕してこそ男だと言われたら、田んぼ農家以外の男たちはどんな顔して生きていけばいいのでしょう。

関連記事

トピックス

田中真一さんと真美子さん(左/リコーブラックラムズ東京の公式サイトより、右/レッドウェーブ公式サイトより)
《真美子さんとの約束》大谷翔平の義兄がラグビーチームを退団していた! 過去に大怪我も現役続行にこだわる「妹との共通点」
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《「来来亭」の“ウジムシ混入ラーメン”動画が物議》本部が「他の客のラーメンへの混入」に公式回答「(動画の)お客様以外からのお問い合わせはございません」
NEWSポストセブン
ブラジルを公式訪問されている秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年6月4日、撮影/JMPA)
《追加生産決まる人気ぶり》佳子さまがブラジル訪問で神戸発ブランドのエレガントなワンピースをご着用 ブラジルとの“縁”を意識されたか
NEWSポストセブン
金スマ放送終了に伴いひとり農業生活も引退へ(常陸大宮市のX、TBS公式サイトより)
《金スマ『ひとり農業』ロケ地が耕作放棄地に…》名物ディレクター・ヘルムート氏が畑の所有者に「農地はお返しします」
NEWSポストセブン
異物混入が発覚した来来亭(HP/Xより)
《ラーメンを食べようとしたらウジ虫が…》「来来亭」の異物混入騒動、専門家は“ニクバエ”と推察「チャーシューなどの動物性食材に惹かれやすい」
NEWSポストセブン
「ONK座談会」2002年開催時(撮影/山崎力夫)
《追悼・長嶋茂雄さん》「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 長嶋一茂のヤクルト入りにカネやんが切り込む「なんで巨人は指名しなかったのよ。王、理由をいえ!」
週刊ポスト
タイ警察の取り調べを受ける日本人詐欺グループの男ら。2019年4月。この頃は日本への特殊詐欺海外拠点に関する報道は多かった(時事通信フォト)
海外の詐欺拠点で性的労働を強いられる日本人女性が多数存在か 詐欺グループの幹部逮捕で裏切りや報復などのトラブル続発し情報流出も
NEWSポストセブン
6月9日付けで「研音」所属となった俳優・宮野真守(41)。突然の発表はファンにとっても青天の霹靂だった(時事通信フォトより)
《電撃退団の舞台裏》「2029年までスケジュールが埋まっていた」声優・宮野真守が「研音」へ“スピード移籍”した背景と、研音俳優・福士蒼汰との“ただならぬ関係”
NEWSポストセブン
小室夫妻に立ちはだかる壁(時事通信フォト)
《眞子さん第一子出産》年収4000万円の小室圭さんも“カツカツ”に? NYで待ち受ける“高額子育てコスト”「保育施設の年間平均料金は約680万円」
週刊ポスト
6月9日、ご成婚記念日を迎えた天皇陛下と雅子さま(JMPA)
【6月9日はご成婚記念日】天皇陛下と雅子さま「32年の変わらぬ愛」公務でもプライベートでも“隣同士”、おふたりの軌跡を振り返る
女性セブン
(インスタグラムより)
「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画…直後に入院した海外の20代女性インフルエンサー、莫大な収入と引き換えに不調を抱えながらも新たなチャレンジに意欲
NEWSポストセブン
清原和博氏は長嶋さんの逝去の翌日、都内のビル街にいた
《長嶋茂雄さん逝去》短パン・サンダル姿、ふくらはぎには…清原和博が翌日に見せた「寂しさを湛えた表情」 “肉体改造”などの批判を庇ったミスターからの「激励の言葉」
NEWSポストセブン