12月1日から幕を開ける歌舞伎座「十二月大歌舞伎」が俄かに注目を浴びている。一部では片岡愛之助(48)と尾上松也(35)が共演、二部に香川照之(市川中車・54)、三部に市川猿之助(44)が出演し、「半沢組」が大集結しているからだ。
ドラマ『半沢直樹』(TBS系)の人気は放送終了後も続き、番組内で披露された「顔芸」や「恩返し」のセリフは今年の流行語大賞にもノミネートされている。
「松竹歌舞伎会会員向けの先行発売では、各回ともに近来まれにみる売れ行きです」(演芸記者)
今月1日から上演されている歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」でも大きな異変が起きている。
「猿之助さんが主役を演じる一部のチケットは初日から完売が続出。そのほか香川さんの息子・團子くんが出演する四部も人気です」(同前)
その一方で、松本白鸚(78)、中村芝翫(55)ら“大物”が出演する三部の演目は、寂しい客入りだったという。
「初日から空席よりお客さんの座る席を数えるほうが早く、役者の『人気格差』が露呈した。白鸚さんも芝翫さんも、梨園では格の高い“名家”の重鎮で、人気を博していたのですが」(同前)
この現象を受け、松竹内部にも大きな変化が起きているという。
「松竹はコロナ禍で営業損失14億円の大赤字。今後は、“家の格”ではなく、チケットの売れる“人気役者”を出す方針になるのでは」(松竹関係者)
歌舞伎は代々、名家の御曹司たちに優先的に“主役”が与えられてきた歴史がある。
「猿之助と香川が所属する澤瀉屋は傍流とみられていた。しかし“半沢ブーム”が追い風となり、松竹は香川や猿之助をはじめ、同じく“主流”ではなかった愛之助、松也らの人気にあやかろうとなったんです」(同前)
歌舞伎界でも「倍返し」の下剋上が始まった。
※週刊ポスト2020年11月27日・12月4日号