警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、アフリカの選挙戦を通して米大統領選挙について探る。
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「アメリカがアフリカに“成り下がった”歴史的瞬間だと認識している」
アフリカ・中東情勢に詳しいアフリカ某国在住のインテリジェンス(諜報)は、11月3日に行われた米大統領選挙をこう分析し、言葉を続けた。
「アメリカはどこの国にも民主的な選挙をしろと押し付けるくせに、今回やっていることはアフリカの選挙と同じだ」
選挙前から不正を警戒していたトランプ大統領は、郵便投票の結果が開票されるにつれ、優勢だった重要州が劣勢に転じ、「票が盗まれた」とTwitterに投稿を連発した。明確なエビデンスに欠く中、トランプ支持者たちも次々とSNSで呼応し、「民主党が票を操作した」とする主張を繰り返している。
「こんな疑惑が次々と出てくること自体、民主主義の根幹を成すべき選挙の信頼が根本から崩れたのではと思えてくる。今回、米国民の相当数が傷ついているのではないだろうか。信じていた民主主義がこんなことになるのかと」
そもそも、選挙とはハードルの高い意思決定システムである。選挙権の取得、投票行動、選挙活動の公平性、選挙管理委員会の独立性など、いくつのもの条件をクリアしないと公正な選挙とはみなされず、国民、為政者、選挙委員会の3者には高い清廉さが求められるものである。
選挙権について言えば、アメリカでは「有権者登録」を行わなければ権利を行使できないため、ここで一つハードルが生まれる。一方で、有権者登録は身分証明が無くても投票所で行うことができ、ミシガン州では選挙当日でも登録を認めていたという報道もあった。これがもし事実なら、州や郡をまたいで複数回の投票ができたことになる。
ウガンダでも、有権者登録は5年に1度、2週間という決められた期間に自分が住民登録されている地区の事務所に赴き、登録を済ませる必要がある。しかし、5時間並んでも自分の番が来なかった、事務所のパソコンが壊れた、登録したのに登録されていないなど、適切に登録されないケースが報告されているという。
選挙活動の公平性では、アフリカ諸国や中東は為政者が警察や軍隊を動員できるため、対立候補への妨害行為が頻繁に見られる。米国務省が公表した「国別人権報告書(2019年)」によると、ウガンダのヨウェリ・ムセベニ大統領の対抗馬である元ミュージシャンのボビィ・ワイン氏が、警察によって何度も逮捕され暴力を受けており、彼の運転手もウガンダ国軍によって銃撃され死亡、彼の同士であったミュージシャンも何者かに拷問され死亡したという報告がある。1986年から34年間にわたり大統領を務めるムセベニ氏は、大統領に立候補できる年齢制限を撤廃するなど自身の私欲のために憲法を改正し、現在の地位に君臨し続けている。
メディア報道に関しては、多かれ少なかれどこの国でも偏向報道は見られ、今回の大統領選でも民主党寄りの「CNN」と共和党寄りの「FOX」の偏向ぶりが目立った。アメリカでは報道の自由が保障されているが、アフリカや旧ソ連では時に命がけで、反政権のジャーナリストは暗殺の対象になりうる。