足音を立てずに、静かに家庭内に侵入する。しかも、人知れず変異を繰り返し、感染力は強化されてきた──。感染が再拡大している新型コロナウイルス。この“第3波”で顕著なのは、家庭内感染の増加だ。東京都の集計では、感染経路が明らかな感染者のうち、クラスター発生が相次いだ「夜の街」関連は3%まで激減した。その代わり、家庭内感染の割合は、11月に入って40%を超えた。デイサービスの利用者から同居する家族への感染や、職場・会食からの感染が相次いで報告されている。
家庭内感染が増加している第3波では、どのような場面に注意すべきなのか。血液内科医の中村幸嗣さんが指摘するのは、「酒席の会話」だ。
「そもそも食事中は唾液の分泌量が増えて感染リスクが増します。いまは自粛疲れした人たちがGo To イートなどに後押しされて外食に出かけ、お酒が入って気分が高揚し、マスクをしないで大声でしゃべるケースが増えている。そうした人が知らないうちにウイルスを自宅に持ち込み、家庭内感染を広めていると考えられます」
最近は肌寒い日が増えてきたので、「冬場のエアコン」に注意を促す。国際医療福祉大学病院内科学予防医学センター教授の一石英一郎さんはいう。
「エアコンをつけっぱなしで、換気の悪い店は要注意です。エアコンは室内の空気を循環させるしくみで換気はできません。今年1月に中国・広州市のレストランで発生したクラスターでは、エアコンの風の通り道に位置していた家族が集団感染しました」
冬場の室内は湿度が下がって乾燥する。すると水分が蒸発しやすく、ウイルスが付着した乾いた粒子が飛ぶ距離が伸び、空中を長く漂うようになって感染リスクが高くなる。店内、自宅ともにこまめな換気と湿度調節を心がけたい。
第3波のもう1つの特徴は、高齢者の感染の増加だ。日本経済新聞(11月14日付)の調査では、感染者のうち60才以上の割合は第2波(8月5日までの1週間)の12.2%から第3波(11月11日までの1週間)は22.3%までアップした。
「60代で仕事をしていて活発なかたは、酒席での感染が考えられます。仕事をリタイアして家にいる70代以上は、家族の誰かがウイルスを持ち込む家庭内感染の可能性が高いのでは」(中村さん)