秋の行楽シーズンには紅葉など景色を楽しみたいが、今年は「密」が不安で……という人にうってつけの観光スポットがある。風光明媚な場所にあることが多いが、付近の人家もまばらで鉄道でなければ訪問しづらい「秘境駅」だ。愛知県、静岡県、長野県をめぐり、渓谷を縫うように走る路線として知られるJR東海の飯田線では、その秘境駅を普通に乗車するよりも少し便利になる観光列車の急行・秘境駅号の運行が10周年を迎えた。ライターの小川裕夫氏が、不便を楽しみに変換して提供する「秘境駅号」人気についてレポートする。
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東京都は11月19日に新型コロナウイルスの新たな感染者数を534人と発表。過去最多を更新しただけではなく、500という大台を突破してしまった。コロナは感染症という脅威を及ぼすだけではない。その影響は、経済活動・日常生活にも陰を落とし、社会全体が疲弊する。
特にコロナで苦境に陥っているのが、観光・飲食・鉄道の各業界だ。それらの業界に救いの手をさしのべるべく、政府は7月からGoToキャンペーンを開始した。だが、コロナ第3波のために微妙な雰囲気となり、今は秋の行楽シーズン真っ盛りだというのに観光・鉄道業界には沈滞ムードが漂い始めた。そんな中、JR東海が運行する秘境駅号がこれまでの鉄道旅行とは違った切り口ということで注目されている。
秘境駅号は、毎年の春と秋に飯田線で運行されてきた。飯田線は愛知県の豊橋駅と長野県の辰野駅とを結ぶ路線で、秘境駅号は飯田線の豊橋駅~飯田駅間を急行列車として運行している。
「飯田線には魅力ある秘境駅が数多く存在しますが、線区の特性上、これらの秘境駅を巡るのは困難でした」と話すのはJR東海広報部東京広報室の担当者だ。
飯田線は全線を乗り通すと約9時間もかかる路線のため、それが目的で乗車する人を除いて全線を乗り通す利用者は、ほぼいない。つまり全線に乗車するという体験自体が珍しく、さらに、秘境駅と呼ばれる駅がたくさん並ぶので、丁寧に乗車するだけでもレア体験を重ねられる。
秘境駅とは、山中・山奥にあり駅周辺に人家や商店がまったくなく、道路もないために鉄道を使わなければ到達することが困難な駅をいう。