完全リタイアして年金生活に入った60代後半から70代にかけては「逃げ切り世代」と呼ばれる。コロナ禍に苦しむ中高年や現役世代には、年金で悠々自適に暮らす“勝ち組”の典型に見えているだろう。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、この「逃げ切り世代」にも“負け組転落危機”が迫っている。経済ジャーナリスト・荻原博子氏が「家族リスク」の警鐘を鳴らす。
「仕事をリタイアして悠々自適の世代にもコロナの影響は出てきます。ちょうど子供が40代くらいで、休業や解雇の対象にされる世代です。夫婦2人なら年金で十分やっていけるかもしれませんが、子供たちは本当に困れば親に頼るしかない。しかも、大学を卒業した子供の12人に1人くらいが引きこもりなどで親元にいるといわれている。子供がそのまま自立できなければ親が年金で一生面倒をみなければならないかもしれない」
コロナ失業による子供家族の“負け組”転落が、悠々自適の年金生活世代に重い負担となってのしかかるリスクが高まっているという指摘だ。
「リタイア世代はそういう事態を視野に入れた生活設計が必要になるでしょう。リモート時代では子供家族は必ずしも都会に住む必要はない。子供世帯もやがて高齢化を迎えるが、親世代のような貯蓄はもてない。いっそ同居して家計を一緒にし、支出を抑えるなどの選択もあり得る」(同前)
そうした柔軟な発想や判断ができるかが、老後危機に陥るかどうかの分かれ道になり得る。
※週刊ポスト2020年11月27日・12月4日号