ネットではイルカをモチーフにしたマスコットキャラクター「ことちゃん」の当意即妙なSNSでの活躍などでも知られる、香川県の高松琴平電気鉄道株式会社、通称「ことでん」が、終電の繰り下げを発表した。全国的に終電が早くなる決定が続いているなか、なぜ繰り下げになったのか。ライターの小川裕夫氏が、人口減少と高齢化社会にあわせた暮らしやすい街づくりに取り組む高松市とことでんのチャレンジについてレポートする。
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新型コロナウイルスの感染拡大を機に、多くの企業がテレワークを導入した。これにより、通勤需要は激減。緊急事態宣言の時期に比べると通勤客は戻ってきたとはいえ、元に戻ったとは言いがたい。そして、完全に元に戻る見込みはないと判断した多くの鉄道会社は運行本数を減らす減便、そして終電を早めるといったダイヤ改正を発表している。
鉄道各社が横並びで減便・終電の繰り上げを発表する中、香川県高松市を地盤に丸亀市・さぬき市などに路線を延ばす高松琴平電気鉄道(ことでん)は、そうした流れとは逆の動きを見せている。
「太田駅~三条駅間に新駅となる伏石駅を11月28日に開業します。それに合わせてダイヤ改正も実施します。ダイヤ改正後は琴平線・長尾線・志度線の3線すべてで運転本数を増やし、終電時間も繰り下げる予定です」と話すのは、高松琴平電気鉄道運輸サービス部担当者だ。
ことでんはコロナの影響を受け、減便を実施している。「11月28日のダイヤ改正で運転本数を増やすといっても、コロナ以前のダイヤに戻しているだけに過ぎません。それでも、以前に比べると9割の水準ですから、コロナ前よりも運転本数は少ないのです」(同)とのことだが、鉄道会社の多くがコロナ以前に戻すことなく減便や終電の繰り上げを実施していることを踏まえると、ことでんは異例の決断をしたといえる。
東京や大阪とは異なり、地方都市の移動手段は自動車が主役。それは、香川県高松市でも変わらない。それでも、ダイヤ改正を機に、増便・終電の繰り下げを実施する理由は何だろうか?
「高松市は、以前から公共交通の持続可能性を探ってきました。少子高齢化はどこの地方都市でも悩ましい課題ですが、高松市はJR四国とことでん2つの鉄道が運行し、多くの路線が市内をカバーしているのが強みです。そのため、鉄道駅とバスを結ぶといった具合にネットワークの再構築に取り組めば、路線バスを効率よく運行することが可能です。そうした考えから、鉄道駅にバスターミナルを併設することが検討されたのです」と話すのは、高松市都市整備局交通政策課の担当者だ。