コロナ禍で一変した生活様式のなか、終の棲家はどこに定めるべきか。50歳以上の男性300人を対象にした本誌・週刊ポストのアンケートで「夢の移住先」上位に選ばれたのは、「鎌倉」だった。
鎌倉は、自然の中で心静かに思いを巡らせ、人情を感じるにはまたとない街なのだろう。現在まで数多の著名人が都会の喧騒から逃れるため、鎌倉に移住してきた。
1984年、作家の伊集院静と女優の夏目雅子は行きつけの『小花寿司』でこぢんまりとした結婚式をあげ、新婚生活にこの地を選んだ。
また、10年前には俳優の豊川悦司が生活の拠点を移し、女性誌の直撃に「土地の方がみんなすばらしく、やさしくしてくださる」と話している。鎌倉という街は、人の温かさが大きな魅力なのだろう。
同じ頃に移り住んだ女優の石田ひかりはネットサイトの取材で、「娘たちには自然というものを日常的に感じていてもらいたい」と語っている。
かつて川端康成などが住んでいたように、今も“鎌倉文士”は存在する。“おおまかになれる街”と表現する藤沢周は1995年夏から住み始め、3年後に芥川賞に輝いた。「東京と比べると空気が違う」と述べた高橋源一郎も50歳を機に移り住み、谷崎潤一郎賞などを受賞した。