国内

寄付で成り立つ「いのちの電話」存続の危機 公的援助が必要

相談員たちはマスクをつけ、密を避けながらコロナ禍でも電話を受け続ける(写真は岡山いのちの電話。共同通信社)

相談員たちはマスクをつけ、密を避けながらコロナ禍でも電話を受け続ける(岡山いのちの電話。写真/共同通信社)

 新型コロナウイルスの感染拡大で日本経済は大打撃を受けた。収入が激減したり、仕事を失ったりする人も多く、その結果、自殺者も増加傾向にある。そんな状況で、死を意識するほどに思い悩んでいる人の“防波堤”となるのが、「いのちの電話」だ。

 日本では1971年に始まった「いのちの電話」は、悩みを持つ人が自由にかけることができる電話だ。全国に6000人ほどの相談員がいて、そのすべてがボランティアだ。「死にたい」という思いから立ち直った人や、身近な人の自殺を乗り越えた人などが、相談員になるケースが多いという。

 苦しみを乗り越えた自分が、相談者の力になりたい──そんな理念を掲げる相談員はこの国の誇りといえるだろう。

 しかし、“絶望を受け止める”という、あまりに重い“仕事”を、善意のもと無償で任せきりにするのは、あまりに負担が大きいのではないか。実際、いのちの電話の財政は、コロナ禍により過去に類を見ないほど、逼迫している。「北海道いのちの電話」事務局長の杉本明さんが明かす。

「運営費の8割は企業や個人の寄付で成り立ち、残り2割が自治体からの助成金です。コロナで企業経営が悪化し、これから先の資金調達が難しくなっています」

 若者の生きづらさや自殺について取材を重ねているジャーナリストの渋井哲也さんは「公的な資金援助が必要」と指摘する。

「苦しい人が、“泣き言を言える場所”は必要です。この場所を維持するため、国や自治体がある程度定期的な金銭提供を行って、最終的には研修時から相談員たちが、これを仕事として食べて行けるようなしくみを作ることが必要です」

 現在のしくみでは、企業や家族の理解がないと相談活動が成り立たない。ならば公的機関が相談員にきちんとした報酬を与えて、自殺防止をバックアップすべきではないか。

 渋井さんは自らの連絡先を公開し、「いのちの電話がつながらない」という若い世代からのSOSを受けている。

「そもそもいまの10~20代は電話を使わず、LINEやメールで直接相談がくることも多い。相談のうち、いちばん若いのは小6の少女で、いじめや親との不和に悩んでいました。多くの相談者は、とにかくつらい気持ちを吐き出したい。返事は期待してないことも多く、私が返信すると『本当に返事が来ると思わなかった』と驚きます」

関連キーワード

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン