新型コロナウイルス感染症の流行拡大とともに、1日に何度も遭遇するようになった“アレ”に戸惑う人が増えている。妊活中で婦人科へ通院する会社員の大岸麻美さん(仮名・36才)は、今夏に体験したこんなトラブルを打ち明ける。
「婦人科の予約時間がギリギリだったので、炎天下に駅から走って行ったんです。到着してすぐ病院の受付で検温したら37.5℃もあり、外へ出るよう指示されました。寝起きに基礎体温を測ったときは36.7℃の平熱だったので、そんなはずはないと説明し、もう一度測ったら36℃台まで下がっていました。事なきを得ましたが、周囲にはコロナを疑われているようで気まずい思いをしました」
病院だけではない。普段から平熱が高めの大岸さんは、外出先の検温でたびたび肝を冷やすという。
「体調にまったく不安がなくても、37℃以上あるとドキッとします。どこへ行っても検温されるのがストレスで、妊活中でなければ本当に解熱剤をのみたいくらいです」(大岸さん)
体温が高くて悩む人がいれば、逆のケースもある。主婦の清田玲子さん(仮名・49才)が話す。
「週に2日通っているスポーツクラブでは、フロントで非接触型の体温計を額か手首に当てて測ります。それが毎回、35℃台で、先日はついに34.9℃と出ました。フロントの人からも『こんなに低くて大丈夫ですか?』と心配されたほど。自覚症状はありませんが、どこか悪いのではないかと不安になります」
今年2月、厚労省は「帰国者・接触者相談センター」に新型コロナ感染の相談をし、受診する目安として「37.5℃以上の発熱が4日以上続く」という基準を発表した。この目安は5月8日に削除されたが、いまも「37.5℃以上はコロナの疑い」という風潮が残り、この体温を超える人は店へ入ることを断られたり、企業では自宅待機を命じられることが多い。
突然始まった感染症騒ぎで、全国民が「体温」を意識するようになった。「高い」「低い」と振り回されっぱなしの私たちだが、そもそも人間には「理想の体温」が存在するのか。