もともと動画SNSで動物、ペットは人気のジャンルだったが、新型コロナウイルスの感染拡大によってその傾向に拍車がかかり、リアルでペットを家に迎えたい人も世界中で増えている。日本のペットショップという業態そのものが動物愛護団体から批判を受けがちなこともあり、その好況が伝えられることは少ないが、ペット用品やペットフード、もちろんペットそのものも売れ行きが好調だという。ここで気がかりなのが、動物という成長する生き物を相手に、日用品のような在庫管理や棚卸しはできないはずということだ。俳人で著作家の日野百草氏が、元ペットショップ店員に「生体(せいたい)販売」の裏側を聞いた。
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「売れ残った子の行方ですか……」
元ペットショップ店員、池野日奈子さん(31歳・仮名)の目が泳ぐ。現在はIT系の会社に勤めている池野さんは以前、ホームセンターにテナントで入っているペットショップの販売員をしていた。打ち合わせ後の雑談で日ごろの疑問を投げてみた。あの売れ残った子たち、犬や猫は、どこへ行くのか。
「これはご存知だと思うんですけど、まず値段を下げます。下げればお迎えがくる(筆者注:売れること)こともあれば、どんなに下げてもお迎えのない子もいます」
池野さんは契約社員だったが店舗の管理なども任されていた。店にもよるのだろうが正社員の店長はいくつかの店を兼任しているため普段は契約やパートの非正規が中心だったという。実質的な責任者が非正規雇用というパターンは、この手の量販ペットショップでは珍しくないとも。
「動物取扱責任者って誰でもなれますからね。私だって何の知識もなかったけど半年働いただけで要件満たしましたよ」
この辺、池野さんの知識は古い。ペットショップ開業に必要な行政への届け出の一つである動物取扱責任者には、これまでは業務に関する資格、実務経験、専門の教育機関を卒業の、いずれかを満たせばなることができた。だが今年6月1日の改正で「公平性及び専門性を持った団体が行う客観的な試験によって、営もうとする第一種動物取扱業の種別に係る知識及び技術を習得していることの証明を得ていること」が加わり、別途動物に関する資格が必要になった。学校を卒業しただけ、実務経験だけでは責任者になることができなくなったのだ。動物の販売や展示が認められる資格は約20あり、すべて民間団体によるものだ。
「そうですか。でもリスト見るとなんでもいいみたいですね。これの3級なんか落ちる人いませんよ」