新進気鋭の若手が何年も鍛錬を積み重ねた熟練した達人に勝る“下剋上”は様々な競技で散見される。ゲームも例外ではない。2019年7月に行われた『フォートナイト(Fortnite)』の世界大会では、当時16歳だった少年ブーガ(Bugha)が優勝し、賞金300万ドル(約3億2600万円)を獲得した。また『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』の世界ランキング1位に君臨するのは、メキシコ出身の19歳、世界的名門ゲーミングチームのティーワン(T1)に所属するエムケーレオ(MkLeo)だ。同ランキングの日本人最高位である7位には、ゲームウィズ(GameWith)に所属する19歳のプロゲーマー、ザクレイがランクインしている。
若い世代が強い理由の一つとしてよく言われるのは「反応速度(反射神経)は若い人の方が優れている」というものだ。特に動体視力や反応速度を要求されるFPS(ファーストパーソン・シューティング=本人視点のシューティングゲーム)では、25歳がプロゲーマーの寿命だと言われることがあるが、果たして本当なのだろうか。脳の機能に詳しい神奈川歯科大学附属病院高齢者総合内科の眞鍋雄太教授によると、推測ではあるものの、その可能性はあるという。
「カナダのサイモン・フレーザー大学で『スタークラフト2(StarCraft 2)』という自分の軍隊を成長させて相手の軍隊を倒すゲームを使い、脳の処理速度について研究した論文があります。16歳から44歳の3305人のプレイヤーたちが、プレイ中の画面の情報をもとにコマンドを入力するまでにかかった時間を測定するというもので、24歳程度から課題解決速度・反応速度の低下が始まるという結果が得られています」(眞鍋教授)
この実験はランプが光ったらボタンを押すといった単純な反応速度を測定する実験と違い、実際にゲームをプレイした時のデータを集計、解析しているため、より具体性の高い実験結果だといえる。しかし、気になる点としては鍛錬・学習効果による影響を考慮していないことが挙げられると眞鍋教授は語る。
「若い世代はよりゲームに時間を費やしているため、他の世代より熟練度が高いだけかもしれません。このような要素を差し引いて考える必要はあると思います。それだけでなく、この研究では被験者の脳の血流や代謝の変化などについて測定しておらず、生理学的な検証がなされていないことも考慮しなければなりません」
そもそも人間の目や耳などから入った情報はどのように脳に届き、指先の動きとして反映されるのだろうか。