中国四川省の駐重慶市英国総領事のステフェン・エリソン氏が11月14日午後、重慶市近郊の川に飛び込んで、溺れていた中国人女子学生を救助し、市民から称賛されている。この救助劇の模様の動画がインターネット上で公開されると、2日間で4000万回以上再生され、エリソン氏は「中国の英雄」としてもてはやされるようになり、重慶市政府は同氏に「特別義勇賞」を授与した。
日ごろは欧米諸国の動静について辛口のコメントをしている中国外務省スポークマンも「この勇気ある行動は賞賛に値する。彼に大きな賛辞を与えたい」と手放しの褒めたたえぶりだ。英国と中国は、香港問題や新疆ウイグル自治区の少数民族迫害問題などでぎくしゃくしているが、この救出劇によって、両国関係に変化が訪れることを期待する声も出ている。
エリソン氏は週末の土曜日、たまたま総領事館の同僚らと近くの観光名所を訪れていた際、人々が大きな声を出して騒いでいたという。そして、女性が川に落ちて溺れているのを発見。同氏はトライアスロンを趣味にしていたため、泳ぎはお手のもので、服や靴も脱がず、そのままの姿で川に飛び込んで女性を救助した。
女性を救助した後、現場にいた総領事館員が撮影した救出の模様をネットに公開すると、たちまち評判になり、中国国営中央テレビ局も報じた。月曜日には動画の再生回数が4000万も超えるほどになった。
ドミニク・ラーブ英外務大臣もコメントを発表し、「週末に学生を溺死から救ってくれた中国重慶市の新総領事、ステフェン・エリソンを非常に誇りに思う。彼の勇敢さとその行動は世界中の英国の外交官のなかでも最高の手本だ」と褒め称えた。
中国のネット上でも称賛の嵐だが、そのなかには、「当時、現場周辺には中国人の市民もたくさんいただろうに、なぜ、彼らは溺れている女性を助けなかったのだろうか。なぜ、たまたま居合わせた外国人が助けなければならなかったのだろか」という、皮肉なコメントも寄せられている。
これについては、中国人が一般的に泳ぐのが苦手だという事情も関係しているのではないかとの指摘もある。党機関紙『人民日報』傘下の『環球時報』によると、中国の学校では水泳を重視しておらず、大人になっても泳げない人が多いといわれる。