コロナ禍が深刻化するにつれ、さまざまな体温測定器が登場している。脇の下や口の中、おでこや手首、センサーの前に立つだけなど計測方法もそれぞれ違う。しかし、その数値にはバラつきがあり、体温が低すぎて驚いた人もいるだろう。免疫のスペシャリストで『体温を1℃!上げなさい』(自由国民社)の監修を務める医学博士の飯沼一茂さんが解説する。
「“体の芯の温度”のことを『深部体温』といいます。これに最も近いのが肛門から挿し入れて測る『直腸温』です。これは脇の下で測る体温より1℃ほど高い。非接触の体温計が低く測定されやすいのは、おでこや手首など、体の表面ほど熱が逃げやすいためです。ただし、走った直後や炎天下では表面の体温が高くなるため、体温も高めに測定されることがあります」
さらに、人の体温は朝が最も低く、夜に高くなるというリズムがある。自分の平熱を知るには、「同じ体温計で、毎日同じ時間に測る」ことが大切だ。
「朝と夜で、1℃近く変わる人もいます。理想は、朝の起床時すぐに測ること。なおかつ、機械式ではなく、昔ながらの水銀の体温計で脇の下を測るのが、最も安定した数値を測れる方法といえます」
朝晩のリズムに加え、生理がある女性には「高温期」と「低温期」があり、体温が大きく変動する。成城松村クリニック院長で産婦人科医の松村圭子さんが説明する。
「健康な若い女性の場合、低温期と高温期を約14日間ずつの周期で繰り返します。排卵から月経までが高温期で、低温期より0.3℃ほど上がり、37℃を超える人も珍しくない。高温期はいわば『微熱』のような状態です。平熱は36℃後半になるのが理想ですので、低温期でも36.4℃以上には保ってほしい」
更年期になると、体がほてって体温が上がっているような感覚を持つことがある。しかしこれは「発熱」しているわけではない。
「実際に体温が上がっているのではなく、女性ホルモンの分泌が低下することで体温調整ができにくくなり、ほてった感じがするのです。熱いと感じて体温を測っても、37・5℃を超えることはほぼありません。また、更年期には上半身がのぼせて、下半身が冷えていることが多い。ほてるからといって『冷やさなければ』と思うのは間違い。下半身を温める必要があります」(松村さん)
体温は異常を見極める1つの目安ではあるが、条件は人それぞれのため、他人と比べてもあまり意味がない。“マイ体温計”で、自分の平熱を把握しておくことが最も大切だ。
※女性セブン2020年12月10日号