同じように働いているのに、家事や子育ての負担は妻である自分に降りかかる。「こんな夫なら、捨てた方が楽になれるんじゃないか」──そんな気持ちを代弁した、一冊のコミックエッセイが多くの女性に読まれているという。
仕事から帰宅し、息つく暇もなく夕食の準備に取り掛かる。一方、夫は夕食が出来上がった頃に帰宅し、冷蔵庫からビールを取り出してテレビを見始める。
振り返れば、保育園からの急な呼び出しや、受験を控えた進路相談でも、仕事を早退するのはいつも“私”。一度でも代わってくれたことがあるかと聞くと、「おれの方が稼いでいるんだから仕事を休めない」「家や子供のことは妻の仕事」と言う夫。
自分は朝まで飲み歩くくせに、私が「友人から旅行に誘われた」と言うと、「子供が受験勉強をしているのに、母親は遊び歩くんだね」と嫌みったらしくつぶやいた夫──。
これらのエピソードを読んで、「うちの夫のことだ」「私と同じつらさを味わっている人がいたとは……」と、怒りと共感を覚えたあなたは、すでに“夫を捨てたい症候群”なのかもしれない。
この9月に発売されるや、ミドル世代の女性を中心にヒットしているコミックエッセイ『夫を捨てたい。』(祥伝社刊)には、仕事をしながら子育てをする女性作者が、「こんな夫なら、捨てた方が楽になるんじゃないか」と思うに至った日々が描かれている。
父親になっても“変わらない夫”と、母親になることで“変わらざるを得なかった妻”の間に、次第に溝が生まれていくリアルな描写に「あまりにも気持ちがわかって、号泣しながら読みました」という女性が後を絶たないという。
この作品は、作者のいくたはなさん(34才)自身の実体験をもとに作られた。
小学2年生の長男を筆頭に、次男、三男、長女がいるいくたさんは、作品が生まれた背景を次のように話す。
「4人目となる長女の出産から2~3か月経ったある日、長男と次男の出産前後につけていた日記を引っ張りだしたら、夫への恨みつらみがびっしりで(笑い)。気持ちを吐き出せる場所が日記だったんだと思います。それをもとにコミックを描いてインスタグラムに投稿を始めたら、想像以上に反響があったんです。
『いままさに同じ状況で悩んでいます』という同年代のかたもいれば、子育てを卒業した50代のかたからも『若い頃のつらかった気持ちの理由がわかってスッキリした』というメッセージも多くて。同じようにモヤモヤとした気持ちを抱える女性の気分が晴れればと思って、私たち夫婦のエピソードを赤裸々に綴りました」