今、業界内で注目を集める20代の俳優として必ず名前があがるのが、仲野太賀(27才)だ。父が俳優の中野英雄(55才)という二世だが、二世俳優として語られることはほとんどない。映画やドラマへのオファーが相次ぐその魅力とは? コラムニストでテレビ解説者の木村隆志さんが解説する。
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現在、主演ドラマ『あのコの夢を見たんです。』(テレビ東京系)と、中村倫也さんに次ぐ男性俳優2番手で出演中の『この恋あたためますか』(TBS系)での好演で話題を集めている仲野太賀さん。
先月公開の主演映画『生きちゃった』に続いて、今月20日にも主演映画『泣く子はいねぇが』も公開されるなど、今年だけで7作もの映画に出演し、来年も2月公開の映画『すばらしき世界』『あの頃。』に2番手でクレジットされるなど、27歳の俳優としては最高峰のポジションに登り詰めた感があります。
特筆すべきは、若き名バイプレーヤーとして評価されるだけでなく、主演も務めるようになったこと。さらに、定評のあるヒューマン作やコメディだけでなく、本人が「慣れない」と話すラブストーリーをこなしているところに現在の充実ぶりがうかがえます。
太賀さんと言えば、いまだに2016年の『ゆとりですかなにか』(日本テレビ系)で演じた“ゆとりモンスター・山岸”役でのブレイクを思い出す人は多いのではないでしょうか。ただ、当時すでに10年ものキャリアがあり、だからこそ太賀さんは認められなかった日々の苦しさを明かしていましたが、そこからわずか4年でここまで登り詰めたことに驚かされます。
太賀さん本人の演技力が評価されていることは間違いありませんが、業界内での取材を重ね、さまざまな関係者のコメントを拾ううちに、その理由が見えてきました。
同世代に刺激を与え、年上から応援される
近年、ドラマの取材をしていると、毎年のように「太賀は愛されキャラだよね」という声を聞きました。具体名を挙げると、2015年の『恋仲』(フジテレビ系)、2016年の『ゆとりですがなにか』と『仰げば尊し』(TBS系)、2017年の『レンタルの恋』(TBS系)、2018年の『今日から俺は!!』(日本テレビ系)、2019年の『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK)。太賀さんはそれぞれの現場で世代を問わず会話を交わし、作品についてコミュニケーションを取るのはもちろん、なごやかに談笑している姿もよく目撃されています。
現場での印象は真摯そのもの。常に「どんな役でどう演じるのか」「役者としてどうあるべきか」を考え込むタイプで、監督やプロデューサーと向き合う様子を見てきました。まじめである分、プレッシャーや悩みを抱えることも少なくないようですが、太賀さんはいい意味でそんな様子を隠しません。だからこそ同世代との距離感は近づき、刺激を与えられる存在となり、年上はその思いを受け止め、応援したくなるようなのです。
実際、太賀さんは宮藤官九郎さん、福田雄一さん、石井裕也さん、深田晃司さん、松居大悟さんら名だたる脚本家・演出家から、役や演技に向き合う姿勢を称賛されてきました。若手ながら、脚本家が演じる俳優を意識した上で書く「あて書き」も多く、さらに「これくらいやってくれるだろう」という期待値を超えてくるため、作り手にとっては創作意欲をかき立てられる面白い存在なのです。
そのため起用は一度のみに終わることはほとんどなく、たとえば映画『生きちゃった』の石井裕也監督は、太賀さんのことを「信頼している仲間」と語り、太賀さん自身も石井監督への尊敬を公言していました。また、2度目、3度目のオファーでも、「これが最後の仕事になるかもしれない」という意識で力を出し尽くすなど、下積み時代から熱量がまったく変わっていないことも、作り手たちを引きつけている理由の1つでしょう。