北朝鮮は喫煙率が非常に高いことで知られている。世界保健機関(WHO)の2019年の報告書によると、北朝鮮では15歳以上の男性の46.1%がタバコを吸っているという。しかし、北朝鮮の最高人民会議(国会に相当)は今年11月初旬、「タバコ禁止法」を可決し、すべての機関、組織、市民が国民の生命と健康を守るために従わなければならないと定めた。
北朝鮮の国営メディアでは、最高指導者である金正恩朝鮮労働党委員長がタバコを手にした写真や映像がしばしば報道されている。そうしたことから、インターネット上では「『タバコ禁止法』の制定と完全に矛盾する。金正恩氏は最高指導者として国民に手本を示すべきだ」との書き込みもある。英BBC放送が報じた。
11月に採択された「タバコ禁止法」では「タバコの生産、販売、喫煙に関する国家禁煙政策によって、司法および社会的管理を強化すべき」と規定しているほか、「政治・思想教育」の場や、劇場や映画館、教育機関、公衆衛生施設、公共交通機関などでは喫煙を禁止すると定めている。しかし、北朝鮮メディアは、罰則規定については触れていない。
北朝鮮でタバコ禁止法が施行された背景には、喫煙が原因による病気などでの死者数が多いことが挙げられる。WHOが毎年発表している国際的な喫煙被害をまとめた「タバコ・アトラス」(2018年版)によると、北朝鮮では毎年7万1300人以上が喫煙による病気で死亡しているとされる。日本の場合、15万7800人とされるが、2018年の北朝鮮の人口は2555万人で、日本の人口1億2650万人の約5分の1。単純に総人口に対する“喫煙が原因による病気での死者数”の割合を見ると、北朝鮮は日本の2倍以上であり、喫煙による死者数が多いことがわかる。
北朝鮮は2005年に世界保健機関(WHO)のタバコ規制枠組み条約を批准し、しばしば禁煙啓蒙運動も行っている。北朝鮮のタバコのパッケージには警告ラベルが貼られ、公共の場での喫煙を控えるよう注意している。国営の朝鮮中央通信によると、北朝鮮は2019年に喫煙の「危険」について喫煙者に知らせる「活発な」タバコ規制キャンペーンを開始したほか、外国からのタバコの輸入を制限する措置がとられていると伝えている。