いまだにワクチンや特効薬が開発されず、「予防」が何よりの薬である新型コロナウイルス。そんななか、日々感染者に接し病気と対峙している感染症の専門医たちはどんな予防をしているのか。専門医たちに、有効な感染予防策を聞いた。
外出時に気がかりなのが、不特定多数の人と一緒に乗る電車やバスの中。実は「車内のどこにいるか」によってリスクが増減する。KARADA内科クリニック院長で日本感染症学会専門医の佐藤昭裕さんは「電車内では座らないようにしている」と言う。
「電車では入り口近くよりも奥に入って立つことを意識しています。電車の座席は、立っている人の飛沫をちょうど受けやすい場所になっている。また、入り口付近の方が多くの人と近距離で接する機会が増え、感染リスクが高まると考えられます」(佐藤さん)
乗り物の感染リスクの研究は日進月歩で発展しており、11月にはスーパーコンピューター『富岳』を使った大規模な飛沫感染シミュレーション結果も発表された。同調査では、電車の車両別で最も感染リスクが低いのは最後尾の車両であることや、タクシーでは窓開け換気より、空調の外気導入モードでエアコンを使って空気を循環させる方が効果的なことがわかった。
電車内で立って過ごすにはつり革や手すりに頼らざるを得ないがこれも注意が必要だ。国立がん研究センター中央病院で感染症部長を務める岩田敏さんは、こう話す。
「病院では、不特定多数が触るドアノブなどに触れたときはすぐにアルコールによる手指消毒をします。つり革や手すりなどに触れた後は、その手で顔などを触らないように注意すること。目や鼻や口の粘膜にウイルスが入ってしまえば感染リスクが高まります。また何かを食べる前や帰宅したときには、必ず手洗いすることを心がけてください」
これはエレベーターなどのボタンでも同様。
「指先で押してウイルスがついてしまえば無意識にそのまま顔を手で触ってしまう可能性がある。ボタンはひじなど、手以外を使って押すことを意識したい」(佐藤さん)
盲点になりやすいのが、飲食店やスーパーで総菜などを挟んでつかむ「トング」だ。
「実際にクルーズ船やビュッフェなどでは、トングを介したと思われる感染事例があります。つり革などと同様、トングを使ったら顔を触らないようにする。また、入店時だけでなく、店を出るときも忘れずにアルコール消毒をしましょう」(佐藤さん)
一方でマスクを取らざるを得ない銭湯やジムのプールでは、更衣室で会話をしないことなどに留意すれば感染リスクは低いという。
「自家用車にひとりで乗っているときもマスクは必要ありません。私も人の少ない公園や道路をひとりで歩いているときなど、人と接触しない場面ではマスクを外しています。状況に合わせて対策は取捨選択することも大事です」(岩田さん)
※女性セブン2020年12月17日号