動植物の様子を定点的に確認して、季節の進み具合や長期的な気候変動などを把握する気象庁の「生物季節観測」。花鳥風月を愛でる日本らしいやり方だが、気象庁は11月10日、2021年から「生物季節観測」の観測対象から「動物」を全廃して、桜や梅など6種類の「植物」のみ観測するとの「大リストラ」を明らかにした。
生物季節観測の大幅な廃止によって、「四季」の感覚が薄れていく可能性もあるだろう。そして、それに追い打ちをかけるのが近年の異常気象だ。埼玉県熊谷市で観測史上最高の41.1℃にのぼったのを皮切りに全国で猛暑が続き、気象庁が「命に危険のある暑さ」と表現した2018年の夏や、史上最大といわれた台風21号が上陸し、全国で大規模停電が起きた同年9月、集中豪雨によって熊本県をはじめとして九州一帯に避難指示が出された2020年7月と、ここ数年、毎年のように「過去最大」の気候変動が起きている。テレビでおなじみの気象予報士・森田正光さんはいう。
「昔は異常気象といっても30年に1回の割合で偶発的に起きるものでした。しかしいまはそうではない。それに加えて梅雨がないといわれていた北海道が梅雨入りしたり、東京では冬の気温の寒暖差が激しいなど、日常的な気候も大きな変動を迎えています。
気象庁は3~5月が春、6~8月が夏、9~11月が秋、12~2月を冬としますが、近年は2月の半ばから暖かくなり、5月からは暑い。梅雨明けに猛暑になることもあり、春と秋が少しずつ短くなってきています」
背景にあるのが、地球温暖化だ。国立環境研究所生態リスク評価・対策研究室長の五箇公一さんはいう。
「石炭や石油などの化石燃料を燃やすと発生する二酸化炭素には地球全体の気温を上昇させる『温室効果』がある。世界中で行われる開発と消費によって大量の二酸化炭素が排出され、地球温暖化に歯止めがかかりません」
実際、二酸化炭素の排出量は過去最高を更新。世界気象機関の調査によれば、2014年から2019年までの世界の5年平均気温は、観測史上最も高くなっている。いまの気温は100年前より平均2℃上がっていると、森田さんは指摘する。
「平均2℃の違いといわれてもピンと来ないかもしれませんが、本来ならば1000年に1℃の変化が100年で起きてしまっている。明治時代は東京がマイナス5~6℃になることが当たり前でしたが、いまは氷点下になったらニュースになる。それほど温暖化が進んでいるんです」(森田さん)