日本シリーズで2年連続の4連敗という屈辱を受けた巨人だが、かつては1965年から9年連続日本一という前人未踏の記録を打ち立てた。そんな黄金期の巨人を象徴するスーパースターON(王貞治、長嶋茂雄)とともにV9巨人の堅牢な内野守備を支えたのが黒江透修氏(81)だ。引退後は巨人や中日、西武など多くの球団でヘッドコーチを務め、名参謀として称えられた。その黒江氏が、今の巨人の後輩たちに提言。黒江氏は「つなぐ野球の復活」を唱える。
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日本シリーズでジャイアンツは打てなかったね。ソフトバンクとはクリーンアップに天と地の差があった。ソフトバンクの柳田(悠岐)の威圧感はさすがだったが、一方のジャイアンツの丸(佳浩)や岡本(和真)にそれほどの力はない。これがチーム力の差になっている。
V9時代は、レギュラー全員が強打者だったようなイメージがあるが、打率3割、本塁打2桁、100打点を達成していたのはONだけだった。圧倒的な存在のONにつなぐ堅実型のチームだったんです。私は1、2番を任されることが多かったが、川上(哲治)監督からは「ONにつなぐことだけ考えろ」と言われた。それぞれが明確な役割を与えられていた。
それに引き替え今のジャイアンツは、選手に個々の役割がない。やはり監督やコーチが「ジャイアンツの伝統はつなぐ野球だ」とはっきり宣言して、選手に細かく指示すべきだろうね。
千賀(滉大)をはじめソフトバンクの投手陣は素晴らしいが、V9選手なら、自分の役割を果たすため、バットを短く持ったり、引っ張らずに流したり、しぶとく食らいついたと思う。川上監督も個々がやるべきことを指示していたと思うし、原(辰徳)のようにベンチで漫然とはしていなかったはず。
原は川上監督の通算勝利数を抜いたが、それは相手に恵まれただけ。比較しては失礼だよ。
※週刊ポスト2020年12月18日号