中国江蘇省塩城市の化学工場で昨年3月に発生した大規模爆発事故について、塩城市中級人民法院(地裁)は11月30日、危険な物質の違法保管などの罪で、工場の運営企業幹部や違法管理を黙認し賄賂をもらっていた地元政府幹部ら53人に懲役9か月~20年の判決を言い渡した。中国メディアが一斉に伝えた。この大規模爆発事故では、死亡者78人を含む約800人の死傷者が出ていた。
これほど多くの被告が有罪判決を受けるのは極めて異例であるのに加えて、事件から1年半しかたっていないなかでのスピード判決であることも、これまで例がない。中国指導部がこの事件を極めて重視していることを示している。
大規模爆発が起こったのは江蘇天嘉宜化工の化学工場で、地元当局者によれば、現場の工場では可燃性のアニソールなどの化学品原料を主に製造していた。
地元メディアは事故直後から「爆発を起こした会社の安全管理に大きな問題があった」と報道していたが、裁判でもずさんな管理の実態が明らかになっている。例えば、同社は2018年2月、江蘇省の安全生産監督管理局が実施した安全検査で、農薬製造に使うベンゼンやメタノールの保管タンクに、緊急時の遮断弁が設置されておらず、危険物の管理状況に問題があると指摘を受けている。実際に、爆発によって化学物質の貯蔵タンク3つと施設5か所が炎上したという。
また、専門家が調べたところでは、工場では作業手順のマニュアルの不備や、工場設備の巡回検査の未実施、安全管理責任者が定められた試験を受けていないなど、計13の問題が指摘されていた。当局は当時、同社に改善を指示し、操業は一時停止されたが、同年12月に再度の調査で安全対策がとられたと判断され、操業が再開。その3か月後に大規模爆発が起きている。