ライフ

壇蜜 世界初の絵本美術館「ちひろ美術館」で感じたぬくもり

1972年『誕生会』絵本の前にて談話する山下裕二氏と壇蜜(絵本『ゆきのひのたんじょうび』(至光社)より)

『誕生会』の前にて談話する山下裕二氏と壇蜜(絵本『ゆきのひのたんじょうび』(至光社)より)

 美術史家で明治学院大学教授の山下裕二氏と、タレントの壇蜜という、日本美術応援団の2人が、日本の美術館や博物館の常設展を巡るこのシリーズ。今回は、東京都練馬区の「ちひろ美術館」を訪れ、その収蔵から展示について語った。

山下:絵本画家のいわさきちひろが数多くの作品を生んだ下石神井の自宅の跡地に建つ、世界で初めての絵本美術館がちひろ美術館・東京です。青春時代に戦争を体験したちひろは《世界中のこども みんなに 平和としあわせを》と語り、生涯を通じて子供を描き続けました。

壇蜜:黒柳徹子さんの『窓ぎわのトットちゃん』の表紙や挿絵でもおなじみですし、『赤い毛糸帽の女の子』は私も昔から大好きでした。

山下:『赤い毛糸帽の女の子』はファン投票で展示作品を決めた「わたしが選んだちひろ展」(2004年)でも1位に選ばれました。ちひろが文も手がけた至光社の絵本シリーズの主人公“ちいちゃん”で、幼少期の自身と重なる少女だそうです。

壇蜜:『誕生会』(絵本『ゆきのひのたんじょうび』より)は子供の頃の楽しみでした。ちひろさんの世界は淡い色彩なのにとってもあたたかい。

山下:自然光が差し込む館内では、ぬくもりもより感じられますね。ちひろが絵を描いたときのように、明るい光のもとで絵を見ることができるよう、美術館では紫外線に弱い水彩画を最新のデジタルプリント技術で再現して展示しています。ちひろの作品は水彩画独特のにじみを生かした個性的な色彩表現があって、子供のみずみずしい表情がいい。目をごく簡単に点のように描いてもちゃんと表情があり、心情が伝わってきます。

壇蜜:嬉しさやさみしさが伝わる、ちひろさんならではの表情の描き方ですね。

【プロフィール】
山下裕二(やました・ゆうじ)/1958年生まれ。明治学院大学教授。美術史家。『日本美術全集』(全20巻、小学館刊)監修を務める、日本美術応援団団長

壇蜜(だん・みつ)/1980年生まれ。タレント。執筆、芝居、バラエティほか幅広く活躍。近著に『三十路女は分が悪い』(中央公論新社刊、12月9日発売)

●ちひろ美術館・東京
【開館時間】10時~17時(最終入館16時30分)※当面の間16時閉館、最終入館15時30分に短縮
【休館日】月曜(祝日の場合は翌日/GWと8月10~20日は無休)、年末年始(1月2日から開館)、冬期休館・臨時休館あり
【入館料】一般1000円
【住所】東京都練馬区下石神井4-7-2

撮影/太田真三 取材・文/渡部美也 衣裳/Wild Lily

※週刊ポスト2020年12月18日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

2024年末に第一子妊娠を発表した真美子さんと大谷
《大谷翔平の遠征中に…》目撃された真美子さん「ゆったり服」「愛犬とポルシェでお出かけ」近況 有力視される産院の「超豪華サービス」
NEWSポストセブン
新政治団体「12平和党」設立。2月12日、記者会見するデヴィ夫人ら(時事通信フォト)
《デヴィ夫人が禁止を訴える犬食》保護団体代表がかつて遭遇した驚くべき体験 譲渡会に現れ犬を2頭欲しいと言った男に激怒「幸せになるんだよと送り出したのに冗談じゃない」
NEWSポストセブン
警視庁が押収した車両=9日、東京都江東区(時事通信フォト)
《”アルヴェル”が人気》盗難車のナンバープレート付け替えで整備会社の社長逮捕 違法な「ニコイチ」高級改造車を買い求める人たちの事情
NEWSポストセブン
地元の知人にもたびたび“金銭面の余裕ぶり”をみせていたという中居正広(52)
「もう人目につく仕事は無理じゃないか」中居正広氏の実兄が明かした「性暴力認定」後の生き方「これもある意味、タイミングだったんじゃないかな」
NEWSポストセブン
『傷だらけの天使』出演当時を振り返る水谷豊
【放送から50年】水谷豊が語る『傷だらけの天使』 リーゼントにこだわった理由と独特の口調「アニキ~」の原点
週刊ポスト
英国の大学に通う中国人の留学生が性的暴行の罪で有罪に
《英国史上最悪のレイプ犯の衝撃》中国人留学生容疑者の素顔と卑劣な犯行手口「アプリで自室に呼び危険な薬を酒に混ぜ…」「“性犯罪 の記念品”を所持」 
NEWSポストセブン
フジテレビの第三者委員会からヒアリングの打診があった石橋貴明
《離婚後も“石橋姓”名乗る鈴木保奈美の沈黙》セクハラ騒動の石橋貴明と“スープも冷めない距離”で生活する元夫婦の関係「何とかなるさっていう人でいたい」
NEWSポストセブン
原監督も心配する中居正広(写真は2021年)
「落ち着くことはないでしょ」中居正広氏の実兄が現在の心境を吐露「全く連絡取っていない」「そっとしておくのも優しさ」
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
〈山口組分裂抗争終結〉「体調が悪かろうが這ってでも来い」直参組長への“異例の招集状” 司忍組長を悩ます「七代目体制」
NEWSポストセブン
休養を発表した中居正広
【独自】「ありえないよ…」中居正広氏の実兄が激白した“性暴力認定”への思い「母親が電話しても連絡が返ってこない」
NEWSポストセブン
筑波大学の入学式に出席された悠仁さま(時事通信フォト)
「うなぎパイ渡せた!」悠仁さまに筑波大の学生らが“地元銘菓を渡すブーム”…実際に手渡された食品はどうなる
NEWSポストセブン
女優の広末涼子容疑者が傷害容疑で現行犯逮捕された(左/時事通信フォト)
広末涼子の父親「話すことはありません…」 ふるさと・高知の地元住民からも落胆の声「朝ドラ『あんぱん』に水を差された」
NEWSポストセブン