新型コロナウイルスに関わる差別・偏見をなくそう、と聞けば、反対する人はいないだろう。ところが現実には、以前から続く職場などでのハラスメントを背景に、差別や偏見に基づいた歪んだ言動がまかり通っている。ライターの森鷹久氏が、職も人間関係も、ご近所付き合いも、コロナをきっかけに広がるハラスメントによって壊れつつある現実をレポートする。
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もはや誰の目にも明らかになった、新型コロナウイルス感染拡大の「第三波」。今年3月ごろから始まり、夏頃「第二波」を経て一度は収束に向かったように見えた。ところが、一年の中で一番寒く乾燥する「ウイルス感染」が起きやすいシーズンにさしかかり、新規感染者数が増え始めると、テレビや新聞では悲観的な見解があふれ出した。
こうした空気は、すでに市民の間にも蔓延し、日常生活に小さくない悪影響を及ぼしている。まだ誰も言わないが、さまざまな場所で「パニック」が起きているのではないか? さらに、それを見逃したり、意図的に見ようとしないことで、近い将来、大きなパニックを呼び込むことにならないか。
「飲食店というサービス業のため、リモートワークはどうしてもできない。怖いながらも働く私たちに、店長は『ごめんね』と声をかけてくれて、万が一、コロナに感染したとしても『誰のせいとかではなく仕方のないこと』と言って励ましてくれました」
東京都内のレストランチェーン勤務・森野裕子さん(仮名・30代)は今年7月ごろ、店長から優しく声をかけられたことを思い出す。売り上げは前年同月比の半分以下、残業がないから残業代も出ず、少ないながらも毎年10万円程度は出ていた業績連動型のボーナスも支払われることはなかった。それでも、優しい上司がいるし、仕事がない人に比較すればマシ、衣食住が欠けているわけでもない。「コロナさえ収束すれば」と前向きだった。
ところが今年11月、同僚のコロナ感染が発覚。家族が感染していたことから、検査によって同僚の感染も判明したというパターンで、森野さんや数人の従業員、そして店長も「濃厚接触者」となったのである。すると、店長は豹変した。
「従業員の感染を本社に言うなと店長が私たちに口止めし、隠蔽しようとしたんです。そんなことできないと言うと、今度は会社の常務という人から電話がかかってきて、店の消毒代、休業期間中の損失は全て従業員に補填させるなどと言い始めたんです」(森野さん)
優しかった店長の姿はそこになく、感染した従業員、そして森野さんたちが「いかに怠惰か」という嘘の釈明を延々と常務に続けたのである。責任回避、自分だけは会社に残りたい、そんな意図が店長にあったかはわからない。だが、感染した従業員は自主的な無給の休業を強いられ、反発しようものなら退社を仄めかされる。感染した同僚は、電話口で泣きながら森野さんに詫びたという。
「10年以上勤務してきた私達にこの仕打ちかと絶望し、店の従業員の8割が辞めました。表向きはコロナによる営業縮小と発表されていますが、実情は違う。今はもう、何も信じられません」(森野さん)