コロナ禍であえぐ財界で、社長交代が相次いでいる。大きく事業展開を変えなければならないタイミングで新しいトップを迎えるのはわかりやすい改革ではあるが、新社長は誰も経験したことのないマーケットに挑む重責を担うことになる。『週刊ポスト』(12月14日発売号)では、8社の交代劇を分析し、各社各様の戦略をひもといているが、そこで紹介できなかった会社と事情を紹介する。
〇阪神タイガース「いずれは阪急出身のオーナーも」
チームから相次いでコロナ感染者を出したことなどを受け、揚塩健治氏が電撃辞任を発表し、12月1日付けで藤原祟起オーナー(阪神電鉄会長)が球団社長を兼務した。この交代劇についてはNEWSポストセブンでも詳報したが、阪急阪神ホールディングスの角和夫・会長の“鶴の一声”で決まったと指摘されており、いよいよグループをリードする阪急がタイガースの経営に乗り出してくるのではないかという憶測がファンと球界を駆け巡った。『経済界』編集局長の関慎夫氏は、順当な人事だったと推測する。
「阪神ファンは気をもんでいるでしょうね。阪急阪神グループは、事実上、阪急が阪神を救済する形で誕生しましたが、一応、両者は対等な関係という建前を保ってきた。しかし、近年はグループ内で阪急色が強まっていて、今回の社長交代もそれを反映していると思います。選手が多数コロナに感染したことに、角会長がかなり怒ったという報道もありました。今回は阪神出身のオーナーが社長を兼務する形で落ち着きましたが、資本の論理が働いて阪急の影響力が強まっていくでしょう。ゆくゆくは社長は阪神出身、オーナーは阪急出身という形になる可能性もありますね」
〇村田製作所「創業家の力は健在」
6月に中島規巨・社長が就任。創業家である村田家以外から初のトップ誕生だった。中島氏はスマートフォンの通信に関わる「高周波部品・モジュール」を主力事業に育てた立役者で、50代の若さで次期社長の本命と目されてきた。関氏はこう見る。
「新社長が発表されたのは3月ですから、コロナはあまり関係なく、既定路線だったのでしょう。中島氏は若くて優秀な人のようですから、創業家への気配りもしっかりできる人材でしょう。創業家以外の初の社長ということですが、前社長の村田恒夫氏が代表権のある会長として残りますから、会社の最終意思決定はやはり村田家の意向が強く反映されると思います。村田家から見ても、安心して任せられるのが中島氏だったのでしょう」