関西のテーマパーク「USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)」の再建を皮切りに、うどんチェーンの丸亀製麺、年金保養施設グリーンピア三木(現ネスタリゾート神戸)、そして現在進行形の西武園ゆうえんちのリニューアルプロジェクトなど、消費者視点で次々と企業ブランドを蘇らせている森岡毅氏(株式会社 刀の代表取締役CEO)。
いまや日本を代表するマーケターだけに、“森岡メソッド”の一端が垣間見える著書も数多い。そして最新刊が、12月14日に発売される『誰もが人を動かせる!あなたの人生を変えるリーダーシップ革命』(日経BP社)だ。
折しもコロナ禍で、先が見通せずに不安を募らせる人が増えている昨今、モチベーションを高く持ち続けるためのヒントが詰まっているといえる。森岡氏はこの著書の中で何を訴えたかったのか。当サイトのインタビューに熱く語ってくれた──。
「本で強調したかったことは2つあって、まず、リーダーシップは生まれつきの才能ではなく、後天的に獲得できる技術だということです。
たとえば、私は35歳からバイオリンを習い始めましたが、天才とうたわれる音楽家たちは例外なく、寸暇を惜しんで練習に励んでいます。確かに才能がないと辿り着けない領域はありますが、私がそこそこバイオリンを弾けるようになったのも、練習することで技術を習得したからにほかなりません。
バイオリンの上達とリーダーシップはまったく同じだと思っていて、生まれつきの才能よりも、後天的な経験や意識付けによって獲得していく力のほうが大きい。自分の経験も含めて、そこは確信しています。もう1つは、結局は自分が何をしたいのかということを、どれだけ自問自答し、かつ外に向かって素直に出せるかということです。
日本は総じて、自分の欲求を抑制することを美徳とする社会、欲を否定する社会です。ですが、リーダーシップの根幹は欲だと思っています。欲というと、とかくネガティブな言葉のイメージが強く、仏教感的な煩悩さも連想させます。しかしながら、欲には良い欲も悪い欲もあり、良い欲こそ生きる活力源になるものなのです。
自分の欲を素直に出すことで、自分は何を達成したいのかを考える手段にもなります。逆に欲を出さずにいると、人に迷惑をかけたくない、人に悪く思われたくないといった思いが強くなり、結果的に許容範囲の中で自分がやるべきことを消極的に選んでいく人生になってしまいます。
自分の周りの世界を少しだけでも変えてみたいと奮い立ち、行動に移していくには、欲がないと成立しません。自分はどんな世界を望むのか、欲に応じてしか行動できないからです」