中国北西部のチベット高原に1万5000年前から存在する氷河で採掘された氷から、30種類近くの未知のウイルスが発見された──これは決してSF物語ではない。近年、実際に行われた研究だ。5年前には、シベリアの融解した永久凍土から、3万年前のウイルスが発見されたこともあった。
「WHO(世界保健機関)は、ほかのコロナウイルスは冷凍状態で非常に安定し『マイナス20℃で最大2年間生存する』という研究結果を発表しています。湿度や表面の種類によって差がありますが、常温での生存期間は最大7日間。コロナウイルスが4℃で安定することは科学的に示されていて、冷凍で長生きすると考えられています」(ボストン在住の内科医・大西睦子さん)
日本国内でも、いち早く冬が到来した北海道で「第3波」が始まり、その後、気温の低下とともに全国各地で猛威をふるい始めたことからも、新型コロナがいかに「寒冷な環境」を好むかがうかがえる。
新型コロナのワクチン、つまり不活化したウイルスを生きたまま運ぶのに「超低温冷凍庫」が必要とされるのも、ウイルスが氷点下を好むがゆえだ。
そのウイルスの性質を考えると、これまで日本ではほとんど注目されてこなかった、ある“危険な感染ルート”が浮かび上がってくる──。
第3波の大きな傾向は、どこで感染したのかがわからない「感染経路不明者」が各地で増加していることだ。東京都が12月7日に発表した「7日間移動平均」では、新規陽性者439.4人のうち「接触歴等不明者」が236.6人。実に半数以上の感染経路がわかっていないことになる。
そんななか大反響を呼んだのが、女性セブン2020年12月10日号に掲載した「ウイルスつき輸入食品が危ない!」の記事だ。
都市封鎖や感染者隔離など、徹底的な対策で感染を封じ込めた中国。おびただしい数のPCR検査を実施し、「1日の感染者ゼロ」の状態を何度も実現してきた。
そんな中国でも、散発的に感染者が1人、2人と現れるケースが少なくない。その経路を丁寧に探っていくと市場関係者、特に冷凍食品や冷凍倉庫に関係する人に行き当たるというのだ。
実際、冷凍食品からのウイルス検出事例も続出している。6月に北京で集団感染が発生した際には、市内の卸売市場で輸入サーモンを加工したまな板からウイルスが検出された。これを機に中国が輸入食品の検査を強化した結果、輸入食品の表面や包装からのウイルス検出が続出している。
「中国は食品包装から感染すると主張し、その予防を徹底しています。また、中国疾病予防管理センターの主任疫学者は、“冷凍シーフードなどを介して輸入国からウイルスが待ち込まれる可能性がある証拠が増えている”と述べています」(大西さん)
最近でも、11月13日から16日までの4日間で、湖北省や山東省など6省10か所で、アルゼンチンやブラジル、サウジアラビアなどから輸入された冷凍肉や冷凍えびから、ウイルスが検出されたことを中国紙が報じている。
つまり、中国で散発的に感染が発生しているのは遠い地から運び込まれた新型コロナが原因と考えられている。食品の移動先が危険なのである。
しかも、極寒に強いというウイルスの特性上、輸入食品のなかでも特に冷凍食品が危ないことは明白だ。